本屋でファッション誌を見ていると、ある雑誌の表紙に窪塚洋介くんが写っていた。
もう40代くらいだと思うが、相変わらずいい雰囲気を醸し出したカッコいいおにいちゃんだった。
誌上に掲載された他の写真も見たが、彼は顔が小さいのでいろんな洋服が似合う。
ぼくの世代にとって、窪塚くんと言えば【キング】だった。
踊る大捜査線と並んでぼくが大好きだったドラマに【池袋ウエストゲートパーク】がある。
石田衣良の同名の小説を原作とした作品で、池袋を舞台にした若者たちの青春を描いたドラマである。
宮藤官九郎脚本と堤幸彦演出が見事にマッチしており、テンポの良さと時折挟まれる小ネタ、ハードで過激な表現で話題となった。
キャストも今になって思うとえげつない豪華さで、長瀬智也・加藤あい・窪塚洋介・山下智久・妻夫木聡・坂口憲二・小雪・佐藤隆太・阿部サダヲ・きたろう・森下愛子・渡辺謙といった堂々たるものだった。
各話に登場するゲストも華やかで、駆け出しだったころの小栗旬や高橋一生も出演していたと思う。
その中でも、当時の少年たちが夢中になったのが、窪塚洋介演じる【キング】ことタカシだった。
タカシは池袋で活動しているカラーギャング【G-Boys】のリーダーで、腕っぷしの強さとカリスマ性で不良たちをまとめあげていた。
何より、タカシの魅力はつかみどころのない飄々とした面と、暴力的で残酷な面を併せ持ったキャラクターであった。
気だるそうに語尾を伸ばす独特の喋り方や、情緒不安定なテンションもカッコよく、当時の同級生にも影響された偽キングが何人かいたと記憶している。
1話にはタカシが一対一で喧嘩をするシーンがあるのだが、酔拳のようなトリッキーな動きなのに相手を圧倒する正統派ではないタカシの強さは、メジャーなカルチャーをダサいと決めつけがちな少年たちの心をくすぐった。
基本的に普段は無邪気な少年のようなキャラクターなのだが、親友であるマコト(長瀬智也)といるときはどことなくリラックスした柔らかい雰囲気になるのも印象的だった。
サウナの中でタカシの誘いを『めんどくさいから』という理由で断ったマコトに、『めんどくせえかぁ』と言ったときのタカシの目がどこか羨ましそうだったのと、同時にちょっと艶めかしい雰囲気も醸していたシーンはよく覚えている。
ファッションもイカしており、白のパーカーとダボっとしたパンツに、ライオンのたてがみのような金髪がとにかく似合っていた。
窪塚くんの顔の小ささだからできた髪型であり、本当に彼のはまり役だったように思う。
ぼくは当時、踊る大捜査線に夢中だったため、青島という公務員がいなかったらキングにインスパイアされていた可能性は十分にある。
数年後、【野ブタをプロデュース】というドラマで、山下智久がタカシそのまんまの喋り方をしていたのは何だったのだろうか。
野ブタは今週あたり再放送されると聞いたので、タカシの喋り方が想像できない人はぜひ見てほしい。
物語の終盤、タカシは一気にシリアスモードになり、髪もオールバックにして冷酷さと狂気を前面に押し出したキャラクターとなる。
それがまたカッコよく、思春期にありがちな根拠のない自信と謎の万能感が合わさって、自分も本気を出せば周りからキングと呼ばれるんじゃないかと思わせるがもちろんそんなことはなかった。
タカシの性格にルックス、それに窪塚洋介という演者が見事にマッチして生まれたキャラクターであり、テレビドラマ史に残る登場人物と言っても過言ではない。
当時の少年たちにかなりの影響を与えたドラマだったが、大人が見ても面白いし、今見ても古さをあまり感じないのがすごい。
今回はキングの思い出がメインになってしまったので、次回はドラマ全体の思い出について語ろうと思う。