公共の秘密基地

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さよなら大好きな人

田村正和さんが亡くなった。
ぼくが昔見ていたテレビドラマやバラエティ番組に出演していた人が次々に亡くなっていき、時代の流れを感じる。
あんなドラマもあったなこんなのも見てたなと考えていたら、子供の頃の記憶が続々と蘇ってきた。
そこで今回は、田村正和さんに絡めた当時のドラマについて支離滅裂に綴っていく。
アラサー後半からアラフォー前半にかけては響く内容になっていると思う。
wiki等は見ずにできるだけ当時の記憶を頼って書くので、細かい誤りはご容赦いただきたい。


田村さんの作品で一番の有名どころは古畑任三郎だと思うし、ぼくが彼を初めて見たのもそれだった。
堂本剛版・金田一少年の事件簿で育ったぼくにとって、刑事・探偵ドラマは事件が起こってそれを主人公が解き明かしていき、最後に犯人が発覚するものだった。
そのため、最初から犯人が分かっていてそれを古畑任三郎が追い詰めていくストーリー展開は斬新で、とにかく夢中になって見ていた。
聞いた話になるが、犯人が最後まで分からない形式のドラマでは、大物俳優を起用することで誰が犯人なのかある程度分かってしまうそうだ。
古畑形式にすることで、そうした点を考慮することなく大物をキャスティングすることができるらしい。
この点は、明らかに怪しい人物を登場させるtrickにも通じるものがある。
古畑で印象に残っているのは観覧車が邪魔で爆破しようと思ったキムタク犯人回であるが、あの回は唯一古畑さんが犯人に手をあげたことでも有名らしい。
あとは風間杜夫だか誰かの回で、早々に犯人だと見抜かれるのだがあえて指摘せずに古畑さんがからかってたような話もあったと思う。
制服の巡査役でなかなか古畑さんに名前を覚えてもらえなかった向島くんが、イチロー犯人回でイチローの兄弟だと言う展開には驚いた。


古畑任三郎以外で田村さんを見たのは、月9でやってた【じんべえ】だ。
奥さんが亡くなり、その連れ子役の松たか子とのラブストーリー的な話だったと思うが、正直それくらいしか覚えていない。
とりあえず主題歌はめちゃくちゃ有名なので、聞いたことのある人もいるだろう。


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原作ありでしかもあだち充なんて知らなかった。
この歌手は小室哲哉プロデュースだった気がするんだけど、これ以降見なくなった。


次は日曜9時にTBS系列で放送していた【オヤジぃ。】だ。
田村正和が頑固で昔かたぎな父親を演じており、妻役に黒木瞳、長女が水野美紀、次女に広末涼子、末っ子の長男に岡田准一という布陣だった。
黒木瞳は別のドラマでも田村正和と共演しており、彼の妻役はこの人と言う意見も多い。
ここで末っ子の長男を演じていた岡田くんは数年後、同じ放送枠で深津絵里末っ子長男姉三人というドラマに出演していた。
あと、田村さんの逝去に対して極楽とんぼ加藤浩次も番組でコメントをしており、俳優デビューとしてこのドラマに出演していたらしい。
彼は月9の【人にやさしく】の印象が強すぎて忘れていた。
頑固親父という役柄上、田村正和は事あるごとにキレるのだが、冷静でコミカルな古畑の印象が強すぎるのでこんなに感情をあらわにする田村さんを見たことがなかった。


ちなみに、このドラマについては印象深い出来事がある。
水野美紀演じる長女は教師の仕事をしており、外でも内でも優等生として通っていた。
しかし、心中では家族のことを軽蔑していて、弟妹たちの悩みや不幸にも本当はざまあみろという気持ちで接していたのだ。
マイナスな感情を持つ自分にも心底嫌気がさしており、あるときそれらの葛藤を父親に対して泣きながらぶちまけるシーンがある。
当時小学生だったぼくの妹が、その場面を見てなぜか号泣しており、軽く引いた。
水野美紀の演技に圧倒されたのか、役柄を自分と重ね合わせて共感したのかは定かではない。
少なくとも、あいつは細やかな心の機微を感じることのないくらい己の思うままに生きているのだから後者ではないだろう。
主題歌が花*花だったので、曲なら知ってる人もいるかもしれない。


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確か【オヤジぃ。】の後は、フジテレビ系列で放送されていたさよなら、小津先生だ。
小津先生は元々銀行だか証券会社だかで金融関係の仕事をしており、なんやかんやあって教師をすることになった。
そのため、教師なんて自分のやるべきことではないと思っており、最初は職務に対して投げやりな態度だったと思う。
生徒や同僚との関わりの中で小津先生自身も成長していくのだが、ぼくが覚えてるのはこれくらいだ。
他のドラマでの役柄も癖のある人物ばかりだったが、今まで見た中で最もどうしようもない田村正和だったと記憶している。
あとは主題歌がaikoだった。


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ドラマのオープニング映像では、自転車を漕ぐ小津先生のイラストが動いてたような気がする。
あと、aikoには思うところはないが、aikoを好きだと言う女にはロクなやつがいない。


ここでちょっと余談。
役柄の印象が強すぎると言えば田村正和もそうだが、古畑任三郎で今泉くんを演じていた西村雅彦(現:西村まさ彦)もあてはまる。
おっちょこちょいで事あるごとに古畑さんにおでこを叩かれていた今泉くんだったため、西村さんについてもしばらく役柄のイメージが更新されることがなかった。
西村雅彦を古畑以外で見たのは王様のレストラン【TEAM】だが、印象が強いのは後者だ。
【TEAM】はフジテレビ系列で放送されていたドラマで、少年犯罪をテーマにした内容である。
文部省(当時)の役人だった草彅剛と、叩き上げ刑事の西村雅彦のコンビが事件を解決していくという話だった。
西村さんの演じる役柄は過去に娘が少年犯罪被害に遭っており、事件で関わることになる少年たちにも性悪説を前提として非常に厳しい接し方をする刑事である。
そのため、今泉くんとは全く異なり激しい怒りをむき出しにするキャラクターだった。
ストーリーが進むにつれて彼は少年に対する態度を軟化させ、思いやりを持って接するようになる。
最終回のひとつ前の話で、西村さんが加害者の少年に歩み寄ろうとして撃たれるか刺されるかしてしまい、公園のベンチに座ったまま意識が遠のいていくシーンが心に残っている。
この作品はぼくの好きなテレビドラマのひとつなのだが、なぜか映像ソフト化はされていない。
一説によると、総理大臣になる前の小泉純一郎が出演していたからという説もあるが、詳しいことは知らない。


時期は忘れたが、金曜10時くらいにやってた【美しい人】もちょっとだけ覚えている。
田村正和に加えて常盤貴子大沢たかおが出演していたのたが、主題歌がフランス語であったことが記憶の大半を占めている。
大沢たかおが妻役の常盤貴子にDVをする旦那を演じており、オープニングでも彼が拳銃を持って歩くシーンがある。
(調べたが大沢たかおはヤクザ役だったらしい。こわい。)
フランス語の主題歌も合わさって、何となく暴力と色欲を伴った不穏な空気を感じる大人なドラマである気がしたので見てない。
実際、当時のドラマは暴力や性的な描写が今より多かったので、そういうシーンもあったことだろう。
ちなみに主題歌はこちら。
覚えている人がいたら嬉しい。


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脚本・野島伸司なんて、胸くそ悪い展開になる予感しかしない。
出演者に時代を感じるし、雨上がりの宮迫さんが出てるのも知らんかった。
しかし田村正和はひとつひとつの所作にエロスを感じるし、常盤貴子は色っぽいですな。


また、この歌手はフジテレビ系列のバラエティ番組だったLOVE LOVE あいしてるに出演し、名物コーナーのひとつだった篠原ともえの楽屋訪問も受けている。
ぼくがあのコーナーで覚えているのは、東野幸治の楽屋で彼が放課後電磁波俱楽部の格好をしていた回だ。


書いていて思い出したんだけれども、キムタクが検事役を演じていた【HERO】ってドラマがあったのはご存じだろう。
最終回後のスペシャルドラマで、彼が山口県だかどっかに飛ばされて綾瀬はるかとコンビを組む話があった。
その回の犯人は中井貴一だったのだが、彼が犯行を自白するシーンは見物だ。
数分間に渡って彼の一人語りで、場面転換や回想映像を挟むことなく、ずっと中井貴一のセリフと表情のみで犯人の心情を描写していた。
あのシーンをまた見たいと思っているのだが、検索しても映像がヒットしないのだ。
せめて知ってる人とあの感動を共有したいのだが、覚えている人はいないだろうか。


上で挙げたドラマはほとんどが中学から高校あたりに見たものだ。
田村正和って大人のドラマに出てる印象が強いけど、こうして思い出すとホームドラマにも割と出ていたらしい。
彼はプライベートを他人に見せる人ではなく、何なら人前でも「田村正和」を演じていたという話もあるようだ。
古畑任三郎なんて今改めて見るとかなり癖のあるクドい演技だけど、それでも成立するのは田村正和あってのことだろう。
あのキャラクターは田村正和自身が決めたものらしいから、IWGPで窪塚くんが演じたキングと似通ったところがあるかもしれない。


田村さんの訃報を受け、古畑任三郎の脚本を書いた三谷幸喜は以下のコメントを発表している。

「古畑を僕に書かせてくれたのは、紛れもなく田村さんです。田村さんがいなくなってしまった今、古畑任三郎が事件現場に戻ってくることはもうありません」

田村正和への愛と感謝、そしてもの悲しさと寂しさを感じさせるコメントだ。
脚本家自身がこう言っている以上、少なくとも三谷幸喜が関わった古畑任三郎リメイクは制作されないだろうし、ぼくもリメイクの必要はないと思う。
古畑は田村正和のキャラクターあってのものだし、特定のキャラクターによって成り立つ作品は他の人物では替えが利かない。
(もちろんドラマとしてもおもしろいけど)
視聴者には犯人が分かっていても見てしまうのは、「田村正和古畑任三郎」がいかにして犯人を追い詰めるかというスター性の成せる業ではないだろうか。
ネタが枯渇しているドラマ業界においては喉から手が出るほど欲しいリメイク素材だろうけど、古畑任三郎田村正和のまま眠らせておいてほしい。
ご冥福をお祈りします。