公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

ひとり上手と呼ばないで

みなさんは日々楽しく生きているだろうか。
ぼくはおかげさまで楽しくしている。
人生の懸案事項の多くを占める仕事とお金の問題が上向きとは言わないが安定しているので、心おきなく他のトピックに心を振り分けることができる。
今後、年齢を重ねたりライフスタイルが変わってくるとまた新たな悩みが登場するかもしれないが、それはどんな暮らしをしていても避けられない。
世の中には納得して自分の人生を選択している人にも外野からごちゃごちゃ言ってくる人がいる。
それに反論すると「言い返すということは本当は満足していない証拠」「図星だから否定してる」と嬉々としてめんどくさいことを言われることもある。
こういう人らはもう人種が違うと思って無視するしかないのだ。


最近、「中高年男性友達いない問題」もしくは「妻以外に話し相手いない問題」が注目を集めているらしい。

toyokeizai.net

こういうのを見ると、いったいどこで注目されているのだろうか?と疑ってしまう。
記事内には雑談力を鍛えられるらしい書籍へのリンクが貼られているので、結局のところ問題にしたい・注目させたいように見えてただのコンプレックス商法なのだ。
友達いない問題は日本だけのトピックではなく、世界的にも共通なのだそう。
男性と女性ではコミュニケーションのスタイルが異なるのは事実だろうが、中高年男性に友達がいないのは本当なのだろうか。
もっと年を重ねて妻が先立った後のことを考えるとまた問題かもしれないが、センセーショナルな書き方をして大した問題でもないようなことを大げさに書いているようで好きではない。
結局はコンプレックスを煽りたいだけの記事なので、あまり真に受けないのがいいのだろうが。
友達のいない中高年というやつは、男は外でバリバリ働き、女は家庭を守る社会の副産物みたいなものだと思うので、生き方が多様化して世代が進めばまた愉快な変化があるかもしれない。


また別の日、こんなTwitterまとめを見つけた。

togetter.com

なんかこう、語彙のなさを露呈するような強い言葉を使って極端な言い方をしているなあと思った。
ただツイ主の主張に対する反論意見も載っているので、決して一方的なまとめではない。
別の人は「漏れなく」という言葉を使って40代・50代の独身者は狂っているとしている。
どうやら実家がスナックを経営していたときの観測結果からものを言っているのだそう。
そんな狭い世界で世間を語られても困ってしまうし、スナック以外の観測範囲があったとしても「漏れなく」というのはいささか言い過ぎな気もする。
狂っていない例をひとつ持ってくるだけで反証になるし、会話に飢えている人が多いと思われる界隈を覗いていればそりゃおかしな人も目立つのでは。
思考がアレな人なのか、バズ狙いのただの放火魔か、どちらにしても一笑に付すべき意見だろう。
ちょっとでも弱音を吐けば「ほらやっぱ狂ってる!」、別に平気だと言えば「平気なんてありえない!狂ってる!」なんて言いそうだ。


そもそも、”狂う”というのは具体的にどういうことなのだろうか。
趣味に没頭するのか、節操なく異性を求めるようになるのか、自殺するのか犬のうんこを拾い食いするようになるのか。
大体、「狂っている」なんて本人の主観でしかないので、結婚もせずに楽しく人生を謳歌している人も既婚者からしたら狂っているように見えるだろう。
一人でいることが耐えられない人からすれば、一人でも平気な人は狂っていると思うのかもしれない。
独身を楽しんでいる人は孤独に耐えられずスナックに行って誰かと話そうとも思わないし。


独身者叩きって、原因のひとつに既婚者の「結婚生活への自信のなさ」がある気がする。
自分が選択した結婚という道に対していまいち正当性を持てず、未婚者と比べて自分は幸せだと思いたいのだ。
既婚者が結婚のストレスを独身者にぶつけているだけであり、独身者が悲惨な末路を迎えれば、自分らの選択が正しかったということになる。
冒頭で紹介した妻以外に会話の相手がいない男性も見ようによっては狂ってると思うので、既婚未婚問わず変な奴はいるのだ。
結婚して子供が生まれたところで虐待だの子殺しだの凄惨な事件もあるわけで、結婚したから狂わないということもない。


こういう、人の生き方にケチをつけるやつを見ると、ぼくの好きなリリー・フランキーさんのエッセイにあった話を思い出す。
リリーさんがあるとき精神疾患を抱える女性にインタビューをしたときのこと。
インタビュー当時は引きこもりだった彼女は、その後バイトを始めるなどして積極的に外に出るようになったらしい。
近況について語り合っているとき、彼女から「わたしって変なんでしょうか…?」と問われたリリーさんは「大丈夫だよ、みんな変なんだから」と返したそうだ。
あいつは狂ってるだの自分はまともな生き方をしているだの比べること自体がもはや変なのだ。

人間関係研修中

5月くらいから、近所のスーパーの店員さんに「研修中」の札を付けた人が目立つようになった。
バイトなのか新入社員なのかは分からないが、皆さんとてもフレッシュである。
「お米の袋にテープを貼ってもよろしいですか?」と今までベテラン店員には聞かれたことのない質問もされる。
研修で聞くように言われているのだろうが、ある程度慣れてくるとその手順も省略して自分なりの働き方をするのだ。
中には、信じられないくらい眩しい笑顔の女性店員さんもいた。
キャバクラ気分で喋りたいだけのジジイ客や、若い子にいちゃもんをつけたいババア客に負けずに、どうぞ目を濁らすことなくそのままの君でいてほしい。


「良いサービスを受けたければ良い客であれ」という信条で生きている。
店員さんも人間なのだから、良い客には可能な限り親切にしようと思うだろう。
また、自分を客観視したときに横暴な客よりも良い客であったほうが理想の自分に近く、気持ちいいのは間違いない。
最近、「良い客」というのは決して愛想が良く、ウィットに富んだ会話をし、ニコニコしていることのみを指すのではないなと分かってきた。
余計なことを喋らず、他の客に迷惑をかけず、店員さんの手を煩わせず、必要なサービスを受けたらお金を払ってスッと帰るサッパリさも良い客の条件なのだと思う。


少し前にこんなツイートを見て、

togetter.com


最近はこんなのを見た。

togetter.com


男性のひとり客についての話題なのだが、これは本当に自分自身も戒めないかんなと顧みてしまう。
最近よく行くコーヒー屋さんがあり、カウンター4席のみのコンパクトなお店で店員さんがひとりで回している。
何度か通っていて分かったのだが店員さんは男性1人女性2人の計3人おり、時間帯によって男性だったり女性だったりする。
午前中から昼までは20代くらいの女性、昼から夕方までは店長の女性、夕方の数時間は男性で、そこからまた店長の女性に交代して閉店までという流れのようだ。
(ちなみに午前中担当の女性がいちばん若い)
席数が少ないだけにお客さんはソロ来店がほとんどである。
どの時間帯にも訪問したのだが、午前中の時間帯(若い女性のとき)が特に男性の単独客が多い気がするのだ。


他にも、近所にお気に入りのケーキ屋さんがある。
一か月か二か月に一度行くのだが、女性のオーナーさんが一人で切り盛りされている。
あちらもぼくのことを認識してくれているので挨拶や軽い世間話くらいはするが、基本的に聞かれたことにしか答えないようにしている。
余計なことを聞かないよう、ウザい絡み方にならないように心掛け、ほんの少しの油断でお気に入りの店に行けなくなる可能性を考えつつ会話をしているのだ。
上記したコーヒー屋さんでも同様だ。
ケーキ屋さんと違って滞在時間が長いため、必然的に店員さんとの会話の機会も多くなる。
基本的には読書をしているのでそこまで会話をすることはないが、あちらも気を遣って話題を振ってくれることがある。
ここでもパスされた話題にはきっちり答えるし、不愛想にならないように受け答えをしているがあくまでもそこまでに留めている。
前述したように、店員さんと仲良く話すことが良い客とも限らないのだ。
間違っても髪型が変わったことや今日の服装について触れてはいけない。
あちらも商売でやってるわけだし、”仲良く"話していると思っているのは自分だけかもしれない。
そんなに意識せんでもと思われるかもしれないが、無頓着になってデリカシーのなさを振りまくよりはよっぽどマシだと考えている。
自分にとってもこれが普通なので特にしんどいということもない。


前も別のコーヒー屋さんで出会ったチンポ騎士団のおっさん客について書いたことがある。

mezashiquick.hatenablog.jp

なんとなく、こちらのお店の人は客あしらいがうまいように見えた。
前述したコーヒー屋さんについても、午前中の女性店員さん目当てのおっさん客というのはぼくの深読みすぎなのかもしれない。
ただまあ、おっさんからすれば女性が愛想良く対応してくれるのは気持ちいいかもしれんが、防衛のためにそうしてるだけなのだ。
ひとりしかいない店内で男性を逆上させてしまえば危害を加えられるかもしれんし、商売に関してよくない噂をでっち上げられて広められるかもしれない。
女性ひとりで店を切り盛りしている店主さんは、もし可能なら「彼ピができました♪」みたいなことを店のSNSにでも載せて、その後の客入りがどうなるか実験してみてほしい。
というか同性同士でも、ダルい絡み方をされるとしんどい。
特に酔っ払いなんか最悪なので、これらの問題は性別で区切るべきではないと思う。
学生時代、友人もバイト先の居酒屋でおばさんに絡まれることが多いと言っていたし。


高田純次さんが言っていたのだが、おっさんがしてはいけない三大話は「説教・自慢話・昔話」なんだそうだ。
昔の話であれば年齢の分アドバンテージが取れると思っているのかもしれないが、聞かれたことに答えるくらいにしておいたほうがちょうどいい。
最近、職場以外に人付き合いのない、友達のいない中高年が話題になっていたことがある。
おっさんの抱える問題は女性に比べて自己責任とされることが多く矮小化されがちだ。
まあ正直、孤独の何がそんなに問題なのだろうとも思うし、おっさんであることを過剰に卑下する必要もないと思う。

6月に読んだ本

別にノルマを決めているわけではないけれど、小説・文芸系なら月に2~3冊は読みたいと思っている。
ページ数にもよるので進行は月によって差があるけど、積んでいる本も随分増えたので何を読むか悩めるのが贅沢で良い。
デカい本棚を購入したので、まだまだ本は追加できそうだ。


↓先月分↓
mezashiquick.hatenablog.jp


↓今回読んだもの↓

破壊神マグちゃん 9 (完結)

 

ついに最終回を迎えたマグちゃん。
ぼくの琴線に触れまくった例の最終回は世間的にも反響が大きかったらしく、帯でも触れられていたしワールドトリガーの葦原先生もコメントを寄せていた。
当時のジャンプが自宅にないので確認できないが、最終回のマグちゃんの表情が変わっていた気がする。
ジャンプGIGAに収録された番外編、単行本書下ろしのエピローグ共にほっこりしつつもどこかもの悲しさを覚えた。
この作品は全編通してほのぼのとしているのだが、ふとしたときに寂寥というか郷愁というか、とにかく切なさを感じることが多く、適切ではないかもしれないがぼくの好きな言葉で言うのなら「滅びの美学」みたいなものを感じた。
不滅の存在である破壊神と寿命のある人間、寂れた田舎の港町、現実の時間と可能な限りリンクした作品内の時間(作者さんもあとがきで語っていた)、それら全ての要素が終わりを予感させるもので、だからこそ美しい。
まあ自分が滅びを待つだけの当事者になったら美しいなんて悠長なこと言ってられんとは思うけど、物語上の話ってことで。
マグちゃんでもあったやりとりなんだけど、人間よりも上位の存在が「人は死ぬから不完全」みたいな極論を振りかざしてくることがある。
夏休みとか長期休暇と同じで、終わりがあるからメリハリを持って日々生きることができるし、今大切にすべき物事を慈しもうと思えるわけだ。
次なる癒し枠として、6/13より連載がスタートした「ルリドラゴン」に期待したい。
表紙がかわいかったし、最新の4話もよかったし(この記事公開時点)、主人公がどことなく命令者ちゃんを連想させるビジュアルでもあった。
マグちゃんへの思いの丈は以前も語っているのでこちらもぜひ。

mezashiquick.hatenablog.jp

ゴールデンカムイ 30(既刊)

最終決戦でキャラとしての深みが増しまくった鶴見中尉が表紙の本巻。
もう最終回間際なんで当たり前かもしれんが、ここまでくると杉元もアシリパさんもお互いを対等な相棒として見ていて、時には矛となり盾となり困難に立ち向かっている様が良い。
今回はバトル展開が多めで、特に杉元の戦闘シーンがお気に入りだ。
彼は柔道経験があるようだし、軍隊にいたから軍事教練で武道的なものはやっていたかもしれないが、土方やチンポ先生のように武道畑の人間というわけではない。
そのため戦闘においては使えるものは全て使った戦い方をするのだが、銀魂の銀さんを彷彿とさせる何でもありで自分が生き残るためだけの我流戦法がカッコいい。
基本的には銃剣を使っているが、最終巻で描かれるアレを使った戦いも良かった。
なんと今回、単行本の帯を藤岡弘、さんが寄せている。
作者さんが依頼をした際、先方から「全話読んでからコメントいたします」と言われたとのことで、コメントだけでなく対応にまで人柄が表れている。
表紙で鶴見中尉と藤岡さんが並んでいる様は圧巻だし、あとなんか帯が太い。
逆に言えば、本を読んでいない人に帯コメントを依頼することもあるし、本を読まずに帯コメントをする人もいるということだ。

虎鶫 とらつぐみ -TSUGUMI PROJECT- 1~5(既刊)

できるだけ「おもしろい」以外の感想を用いたいと思っているんだけど、一巻を読んだ後「おもしろい」と言わざるを得なかった作品。
核戦争で荒廃した日本から機密文書を見つけ出すために、現地に送り込まれた死刑囚の主人公が奮闘するお話。
主人公は有能でサバイバル能力にも長けているのだが、敵対勢力が輪をかけて強いので主人公自身が無双することはない。
パワーバランスがなかなか絶妙で基本的には逃げの一手だし、主人公が人質に取られたり守られたりする役回りになることが多いのも特徴。
そのため、常に展開に緊張感があるし、いい具合に世紀末サバイバルをしている。
異形のデザインもキメラ感があって好きだし、設定とかよくこんなの思いつくなあと感心する。
ちなみに二巻では作者さんと昔から交友があるらしい、ヒロアカの堀越先生が帯コメントとヒロインのイラストを寄稿している。
堀越先生はケモナーだと思っていたが、本人曰く「ストライクゾーンが広いだけ」らしい。

午後の曳航

13才で中二病の少年・登、その母親で自分を大切に保ちすぎた未亡人の母・房子、いつか漠然とした栄光を手にしたいと思っている船乗り・竜二の三者の物語。
登には5人のお友達がいて、彼らはみんな自分のことを天才だと思っており、大人や教師や社会はゴミ溜めだと考えているという何とも微笑ましい集団を形成している。
子供には自分にしか分からない不可侵の世界があるが、いくら大人びていても親が自分以外に大切なものを作ること、親の中で自分の存在意義が揺らぐことには敏感なのだと感じた。
三島由紀夫の文章はよく「綺麗」と言われることが多く、特に「金閣寺」を読んだ人からこうした感想を聞くことが多い。
金閣寺は未読なのでその感想にはいまいちピンとこなかったのだが、本作では三島由紀夫の比喩や描写の美しさに感心することしきりだった。
帯が解ける音を「蛇の威嚇のような鋭い音」と表現したり、裸の母親の股間「可哀そうな空家」と言ったり、「彼女の乳房に至るなだらかな勾配は、急に傲った形になって」などという身体の描写があったり、勃起した男性器を「つややかな仏塔」と表したり、この表現力を磨くに至った三島由紀夫の人生に興味が湧いた。
登は船乗りの竜二に憧れていたのだけれど、彼が母と夫婦になって海を捨て、凡庸な人間となることに我慢がならなかったため、仲間たちと共謀してある企てを実行する。
行動原理には母親を取られることへの嫉妬もあったと思うが、最初のきっかけが「カッコいい男がカッコ悪くなるのが嫌だから」という理由なのが面白い。
同性愛者であった三島由紀夫の内面が表れているのかなと興味深く読んでいた。

官能小説用語表現辞典

三島由紀夫の本を読んだあと、自宅に積んでいた本の中から次はこれしかねえと手に取った作品。
官能小説で使用された男女の身体描写を一冊にまとめた本。
単に用語を列挙しただけでなく、前後の文章や使用された作品・作者名も載っている。
女性なら陰唇・陰核・陰毛など、男性なら男性器・精液などパーツで細かく目次が分けられている上、オノマトペなんかも載っているから自分に合った表現を見つけることができるぞ。
初見で立ち読みしてインパクトに圧されて買ったのだが、読んでいくうちに気が付いたことがある。
例えば、女性器のことを「寒ブリ」と表現している作品があった。
これだけ見ると単に表現の妙と言えるのだが、作品名に「金沢」とか「女将」などと入っていたことから、地名や登場人物から連想して女性器を寒ブリに例えたのだと思う。
ワードそのものも重要だが、作品の舞台や前後関係にも注目することが官能小説の楽しみ方なのかなと、官能小説未経験ながら思いを馳せていた。
どれだけ舞台設定や登場人物の背景、シチュエーションを工夫しても、官能小説なのだから最終的にやることはセックスである。
やることが決まっているからこそ、官能小説の作者たちは表現を凝らしてセックスの描写に精を出したのだろう。(性行為なだけに)
上記の三島由紀夫の作品で紹介した「空家」表現はこの本でも登場していた。
ちなみに個人的お気に入りは、女性器を例えた「通い馴れた肉の小径」だ。
YouTuberの餅月ひまりさんが本作品を読んだ感想動画も面白いので、こちらもぜひ。


www.youtube.com

天国へようこそ

最近まで、漫画「宝石の国」がwebで無料公開していたので読んでみた。
宝石の国はアニメだけ見たことがあって、無料公開に際して続きを知ることになったのだが、アニメまでのお話って本当にプロローグに過ぎなかったんだなと。
初見だと人物名が覚えられないので、アニメを見ておくと声や髪の色などで判別がつくので良い。
正直、登場人物の誰一人にも共感も感情移入もしていないけど、それでも面白いと思えるのはすごい。
誰の一番にもなれないってしんどいことなんですね。


ところで、自分が触れた作品についてネットで誇大広告の如く大袈裟に喧伝する声が気になる。
宝石の国については「地獄」だという意見が散見された。
ぼくはアニメまでしか見ていなかったので、今回の無料公開に際して一気読みしたのだが、どこが地獄なのか教えてほしかった。
以前はゴールデンカムイのことも同様に「地獄」だと評する人を見たが、みんな自分と向き合ってがんばってて報われてるやつもいるのに地獄はないだろうと。
宝石の国に関しては本誌で読んでいたわけでも単行本を持っているわけでもなく、アニメを見たのと無料公開で読んだだけなので、解釈や思い入れの違いがあるかもしれない。

togetter.com

togetter.com

地獄だと言っている人らは主にTwitterにいたのだが、ぼくはTwitterをやっていないので上で貼ったまとめで見た。
少なくともこのまとめで紹介されている人たちは、宝石の国ゴールデンカムイも具体的にどういう点に地獄を感じたのか書かれていない。
(コメント欄には具体的に述べている人が結構いた)
「地獄!地獄!」とみんなでキャッキャしている様子は共感性羞恥が発動してこちらが恥ずかしくなる。
耐えられる時点で地獄ではないと思うし、耐えられなければ読むのをやめるだろうから。
因果応報、勧善懲悪、信賞必罰、努力は必ず報われるって作品ばかりではないし、逆にこれらの要素がないと「耐えられない…」とか言うのならもうちょい作品選びを慎重にしてはどうだろうか。


全員が全員そうだとは言わないが、SNSをやっている人は他人からのいいねと注目を雨のように浴び、自分の承認欲求を満たしたいと思っているだろう。
偏見だけれども、バズるのに必要なのは極端な思想と強い断定の文章だ。
Twitterは文字制限もあるので短文でインパクトのあることを言うスタイルと相性がいい。
以前もブログで書いたのだが、「小1の息子はYoutubeを至高の娯楽で本は音の出ないゴミだと思っている」というTwitterの投稿が話題になったことがある。


感想が自分の中にあっても、普段から思ったことを言語化する習慣をつけていないと自分の内面であっても言葉にするのは難しい。
ましてや今はSNSで自分と同じ作品に触れた人の感想を簡単に見ることができる。
だから、作品を見てどう感じたのかを自分の頭で考えることなく、近い感性を持った人の感想を見て満足してしまうのだ。
だから、地獄論者も深く考えずにセンセーショナルな単語を言っているだけな気もする。
ちょっと気分が落ち込んでいることを「病み」と言うようなもので、鬱展開が続くことを「地獄」と表現しているだけで、実際はそこまで深刻ではないだろう。
キャッキャしてる様子が恥ずかしいと先ほど言ったが、まあ一緒になって騒ぎたいだけの人もいるだろうし。


また、強い言葉に引っ掛かりを覚えてしまうのは、イキリオタク特有のムーブが癇に障るからというのもある。
結局あいつらがやりたいのは
「自分の好きな漫画って地獄が多いからwww」
「薦めてもいいけど地獄だよ?戻ってこれないよwww」
「自分の趣味って理解されづらいからなあ(ドヤ顔)」
というクソキモイキリオタクムーブなので、キャバ嬢のさしすせそ構文*1でも使って適当にはいはい言っていれば勝手に気持ちよくなる。
大体そういうやつらは、アニメや漫画を見ない人のことを「一般人」と言ったり、作品を見ることを「履修」と言ったり、いちいち選民思想がキツい。
Twitterで地獄地獄言ってる人らも軒並みクサくて見るに堪えないし。
仏教的観点から地獄の定義とは何かとか、もっと地獄と呼ばれる漫画はたくさんあるとか、その程度で地獄とか(笑)、などと言うつもりはない。
お前は好きな作品の薦め方、それでいいと思ってるのか?と問いたいのだ。
プッシュの仕方とノリが特殊すぎると、妙な先入観を与えてしまって新規の参入が阻まれることだってある。
気持ち悪いノリのやつや、自分と別世界すぎるやつが薦めてるものに触れたいと思うか?
強い言葉を使ってまで広めたい作品なんでしょ?だったらなおさらSNSのお仕着せじゃなく、自分の頭から絞り出した言葉で伝えろよ。
それでもまだ「地獄」と言いたいのなら解釈違いということでこの話はなかったことにしよう。
自分の年齢もあってこういう考えになるので、若い時に触れていたらまた違った解釈があったはずだ。


Twitterで過剰に強い言葉を使って感想を呟いている人など極々少数であって、いちいち気にするのはそれこそ強い言葉に引っ張られている証拠だ。
たぶんだけど、ゴールデンカムイを地獄だと評している人は「昨日まで仲良くメシ食ってた人らが次の日には殺し合ってる」的な展開のことを言っているのだと思う。
宝石の国に関しては、「主人公がとにかく失敗し続けるものの不死であるため死が救済にならない」ことだろうか。
まあ確かに、括弧内をそのまま言ってしまうとネタバレになりかねないので一言でうまいこと表現したいのだろう。
どこに地獄を感じるかは人それぞれなわけだし。
別に喧嘩したいわけではないので、地獄論者の方がいらっしゃったらどのあたりに地獄を感じたのか教えてほしい。

*1:さすが・知らなかった・すごい・センスいい・尊敬する

超愛してる

ネットに入り浸っていると見ない日はないであろう「こたつ記事」
すごいことをした人よりも、「こいつすごいやつなんすよ」とデカい声でのたまうやつが注目されるという嫌な構図となっている。
聞いたことのないwebメディアだけでなく、週刊誌やスポーツ新聞も相次いで同様の記事を掲載している。
「アイドルの○○がアップした写真の美しさに絶賛の声が殺到」
「意外な生活習慣を公開した俳優の××に一同絶句…。」

みたいなやつで、単にテレビ番組の要約だったりSNSのコメントを拝借して記事にしただけのもので、ロクに取材もせずに書かれていることからこたつに入ったままでも書けるという意味で「こたつ記事」と呼ばれているのだ。


そんなプライドの欠片もないこたつ記事であるが、見ていて気付いたことがある。
しょうもない記事と言えどインパクトは重要なようで、勝手にコピペされたSNSのコメントも単に「かわいい!」みたいなやつではなく、何というか絶妙な気持ち悪さのあるものが多い。
本人の目に留まろうとしてうまいことを言いたいやつ、思いが溢れ出ているものの言葉にできてないやつ、様々なファンの思いが記者によって転載されていた。
というわけで、こたつ記事を巡回して見つけた「背中がぞわぞわするコメント」を集めてみた。
ルールは下記の通り。

  • 期間は2022/5/25~2022/6/25
  • 対象の芸能人の性別は問わない
  • yahooニュース等のポータルサイトに掲載された記事のみ
  • 本人に向けられたコメントが対象で、風景や食事、子供やペットなどは除外
  • 伏字にしている部分は芸能人本人の名前が入る
  • 誤字脱字はそのまま載せている
  • 海外からのコメントを日本語訳したものはニュアンスが伝わりづらいので除外


「え?!誰?!こんな可愛い人フォローしてたっけっと一瞬誰かわかりませんでした」

「唯一無二すぎます!もう神です!!!」

「腰肉も可愛く見える。なんで?」

「こんな美人ママ存在するのね…」

「はい優勝」

「天使がいるぞ!」

「橋本環奈かと思った」

「美しすぎてくらくらして倒れそう」

「美がとどまるところを知らないですね!」

「なんでそんなに若いの!?」

「○○ちゃんの単勝賭け!!」

「美しい…この一言」

「可愛いと綺麗が渋滞」

「あなたはどこまでかわいいの!」

「スッピンが小学生!!」

「とてもママに見えないくらい可愛い」

「リアルに美人」

「お人形のようなミレイさ」

「紳士でいられなくなってしまう」

「○○○可愛い光線炸裂」

「今、地球上で無敵でしょ?」

「舞い降りて来た」

「美人で美脚、言う事なし」

「30歳の女の子のように見えます」

「30歳の女の子のように見えます 若くてきれいだ」

紅白歌合戦の司会二人でやっちゃいます?歓迎です」

「エルフだ…」

「今でもオファーきたらJKいける」

「白い世界に美女が映える」

「花が○○○りんに負けてる」

「私は恋に落ちます」

「綺麗な花も恥じらうくらい…○○ちゃんは綺麗です」

「モロ生活感な洗濯がなんでこんなにお洒落に見えるのでしょうか」

「上から下まで全部可愛い」

「可愛い以外のコメントが出てこない」

クレオパトラ生まれ変わり?似合いますね」

「あまりに綺麗すぎて時止まりました」

「女神降臨 美しい」

「流す汗まで美しいザマスょ」

「顔がヴィトンだね」

「天才的に可愛いのですが」

「本物の妖精ちゃんだ~」

「○○ちゃんは年をどっかに忘れて来たんか?」

「お顔が国宝です」

「これ、生で見たら泣いちゃうかも」

「可愛すぎて絶叫中っ」

「ワオ!なんて美しい」

「魂が震えます」

「え?妖精さん妖精さんだったのですか?」

「履歴書なら即採用の可愛さじゃないですか」

「なんでそんなにかわいいわけ」

「可愛すぎて勘弁してほしい」

「足長いなあ、何度も言うけど」

「ホントの事を言って良いですか? 可愛い」

「影より黒似合うー」

「控え目に言って嫁に欲しいです」

「これが子供産んだ腹かい?」

「橋本環奈に見えた 痩せました?!お顔がスッキリして見えます!」

「ワンダフル美人さん かっこいいですね ビッグだわ~」

「お似合いです! はにかみが膝に少し出ています」

「ワォ!短・短・短………」

「顔面も髪色も天才かわいい」

「あかん きょうも可愛すぎる」

「手にしたボールの如く、激しく打ち抜かれております」

「顔面国宝拝ませていただけて眼福」

「綺麗だ、今日も」

「汚れなき美しさ!」

「素敵すぎて一瞬時止まりました」

「# やんごとなき おみ足」

「尊さで吹っ飛んだ」

「超絶綺麗&美人&美しい女性!」

「脚出されたらもう無理~」

「こんなに美しくて楽しそうだと独身女子に憧れちゃいます」

「可愛く淡路島に二輪の美しい華がさいている」

「本当に可愛いくて可愛いくてしかたない」

「お姫様が転生じゃん」

「かっこよすぎて涙出ました、やばい好きです」

「マジで20代やな、これは」

「少女ですか!?」

「この世で一番かわいい」

「それは反則ですぅ 可愛すぎて倒れそう」

「超超超超超超超超綺麗!」

「素敵女性Beautiful」

「だれも勝てんこれは」

「誰も勝てんどこれは」

「あかんて耐えれんやん」

「パジャマ姿でいられたらこっちが仕事にならん」

「イワカンナシ」


●感想箇条書き

  • 容姿が整っているタレントを見ると絶叫したり気絶したり号泣したりする人が多い
  • 女性タレントの場合は美しさを橋本環奈に例えるコメントが多かった
  • 倒置法は気持ち悪い
  • 人妻に対して「ママとは思えないかわいさ」というコメントが多数あり、深層心理では人妻はブスでなければならないと思っている人が多い
  • 誰とは言わんけど、とあるジャンルのファン層は特に気色の悪いコメントをする人が多い


(元)アイドル、(元)女子アナ、コスプレイヤー、Youtuber、インフルエンサー、頻繁に炎上する芸能人などはヤフコメで否定的なコメントが多かった。
ついでに目を引いたヤフコメも集めようかと思ったけど、あそこは論客気取りの人間と承認欲求をこじらせた人間と誰かの成功を妬む人間しかいないネットの掃き溜めなので、コメントを見ているだけで嫌な気分になる。
コメントにいいねがつけられるから余計に勘違いするし、年代も偏っているので考えもとにかく一辺倒だ。

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