公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

好きなら理解って

SNSとかネットでは、今日も「男に生理のつらさを分からせよう」と息巻いている人がいる。
正直、過激派に関しては知らんがなと思って冷めた目で見ている。

googirl.jp

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申し訳ないけど、いくら言葉を尽くして語られたところで完全に理解することなどできないのだ。


決して生理について馬鹿にしているわけではない。
体調も個人差が随分あるらしく、ちょっとお腹が痛くなるレベルから、動けないほどしんどいという人までいるらしい。
今まで付き合ってきた女性や周りの女友達には、見たり聞いたりした限りでは重たい症状の人はいなかった。
それは本当に軽症だったのかもしれないし、気を遣って振舞っていたのかもしれない。
何にしても、自分には分からないツラさだからと言って大したことないだろうと決めつける気はないし、生理のしんどさを見せまいと気を遣ってくれているのなら尊敬すべきだ。


だけども、上で紹介した記事のような内容は失笑を禁じ得ない。
まず、男性に生理がない以上、しんどさを身を以て実感することはできないわけだ。
なのに、「内臓をぞうきん絞り」だの「腰にダンベル」だの「ボクサーに下腹部を小刻みに殴られてる」だの、女性自身も体験したことのない痛みで例えるのは滑稽でしかない。
事実を正確に伝えればいいものの、やたらと話を大きくしたがるから逆に伝わりづらいし信憑性もない。
お前、元気なときに腰にダンベルぶら下げて比較したしたことあんの?
貧血の状態でボクサーに腹殴られたことあんの?
あるんだったらすまん。
こいつはボクシングでボディブローを喰らっている選手を見て、「わー、生理と同じくらいしんどそう」って思うのだろうか。馬鹿じゃん。
この中で事実のみを相手にも分かるように伝えているのは四人目の人くらいのものである。
以前ネットで見たことがあるのは、「身体の内側からアメフト選手にタックルされているような痛み」というものだが、こいつは美食会副料理長トミーロッドの如く体内にアメフト選手を飼っているのだろうか。


女性特有の悩みを軽んじられて腹が立つのはよく分かるし、理解できない痛みだからと言って男性側が軽んじるのも間違っている。
とはいえ馬鹿にされたんならともかく、女性全員が生理に対する理解を深めてほしいと思っているわけでもないだろう。
放っておいてほしいと思ってる人、しんどいってことがふわっと分かってもらえればいい人、生理周期までバッチリ把握しておいてほしい人、様々だと思う。
生理の理解を深めてほしい派の意見だけでなく、そうでもない派の意見もほしいところだ。
まあおそらくこのwebサイトの目的は男性への啓発を促すものではなく、女性の内々で愚痴を言い合って共感し合うためだけのものだろうけど。


あと、記事タイトルで「生理痛なめんなよ…?」って暗黒微笑ばりの凄みを見せてるけど、別になめてはなくない?
どうしてパートナーに生理のことについて説明しているのか、この記事だけでは詳しい前後関係が不明ではある。
だけど一人目や四人目の彼氏は生理痛について自発的に質問してるし、二人目の彼氏に至っては何の前振りもなくダンベルを腰に装着されている。
見た限りでは生理の大変さについて理解はしてないかもしれないが軽んじているわけではないわけだ。
まして、女性側の分かりづらい伝え方にも一応は共感してくれている。
理解して欲しいのなら相手にも分かるように伝えるべきで、自分も未経験の事象で例えるあたり、おそらく真に理解してもらおうとは思っていないだろう。
これらの例えで伝わると思っているんなら本当に頭が悪い。
分かってほしいというよりは、いたわってほしいだけ、大変さを分かってほしいだけなのだと思う。
思いつく限りで男性にできることはおそらくそれくらいしかないので、別にそれは構わんけど。
それに、こうしてしんどさを口に出して言ってくれるだけマシだとも解釈できる。
男性には痛みが想像できない上に、メンタルの乱れや体調不良にタチの悪い女性特有の「察して」が加わると最早手が付けられない。


こういうのを見てると、女性は生理の痛みに耐えて普段からがんばってる強い生物だと思ってほしいのか、弱い生物だから守ってほしいと思っているのか分からん。
やれレディファーストだの割り勘はありえんだの生理のときは労われだの優遇と特権を求める割に、一方では生理でも何食わぬ顔で過ごしてたり、妊娠出産の痛みに耐えられたり、女性って強いんだよ!と言っている。
都合のいいところで強くなったり弱くなったりしている印象しかない。
いや分かるよ、女性に配慮を求める層と、女性は強いんだと主張する層が決して同じではないということは。
でもさ、殊更に自分の属性の優位性をアピールされると、冷めた目で見たり突っ込みたくなる気持ちもあるのよね。


余談になるが、この記事を書いたライターの他の記事を読んでみた。
生理の話と同じように「妊婦なめてるだろ…」というタイトルで旦那が出産の壮絶さを知った体験談まとめがあった。
女性の苦労について共感してほしい類のライターなのかと思えば、「ブサイクだっていいじゃん!」という表題でタイプではなかった男性のことを好きになった女性の体験談をまとめてもいる。
女尊男卑バリバリの思想を持っているとかのバックボーンがあるわけではなく、特に何も考えずに食いつきのいいワードを使っただけの人だと思われる。
もっと言えば、「女性は上から目線で傲慢な物言いをしても問題ない」と無意識で思っているタイプの人だろう。
例えば、性別逆にして「ブスな彼女でも幸せです!」なんて記事を公開しようものならどうなることか。
天に向かって吐いた唾がいつかこの人にも戻ってくるときがくるのだ。


各々が自分の生活の中でやることをやって一生懸命暮らしてて、ときには愚痴を言いたくなったり折れたりしそうなときがある。
だけど自分と同じようにみんな大変だしなとかみんながんばってるしなって思って自分を奮い立たせたり、愚痴を言うのを我慢したり爆発しない程度にちょろちょろ発散したりするものだ。
病むまで耐えることが美徳だとは言わんけど、しんどいことがあるたびに大げさに叫び散らかす人もそれはそれで付き合いづらい。
いちいちこんなアンケートサイトに体験談を投稿してる人って、とにかく自分優先の思考っぽい印象を受ける。
ライターが体験談を捏造して適当に書いた可能性も高いので、まずは生理痛の体験談を投稿した女性を屏風から出してもらいたいものだ。

乱闘パーティ

おっぱいパブとかセクキャバみたいなものが好きではなくて、それは何でかというと「人の性的な場面を見たくないし見せたくない」というのがある。
これらの業態について詳細な説明は省くが、まあ「おっぱいを吸ったり揉んだりしてもいいキャバクラ」くらいに考えておいて問題はない。
例えば友人と一緒に行ったとして、隣でそいつが懸命に嬢の乳首を吸うところなんか見たくないし、ぼくが嬢とキスするところも見せたくない。
友人に限らず、どっかの知らないおっさんでも同様だ。
他人のスケベモードなんか知りたくないし、単純に気持ち悪いし、切り分けて考えることもできない。
いくらそいつが良いことを言ったり、家族のためにがんばって働いている姿を見たりしても、「でもこいつ嬢のおっぱい吸ってたしな」となって冷める。
「立派なことを言ってても一皮剥けば動物」を目の当たりにするからだ。
動物的行動はあんまり人に見せるものではない。


friday.kodansha.co.jp

newsdig.tbs.co.jp

nordot.app


だからこういう乱交パーティみたいなことができる人は嫌悪感よりも畏敬の念が勝る。
みんな楽しそうで何とも夢のある話だなあと思ったのだが、とりあえずは犯罪扱いになるらしい。
前者の大阪会場は「売春防止法」に違反したらしく、後者の静岡会場は「公然わいせつ」が適用されたのだそうだ。
(ちなみに大阪会場は2020年の話なので逮捕時のニュースがなかったため、参加者の話をソースにさせてもらった)
売春防止法」については具体的な内容を知らなかったので調べてみた。

本法にいう「売春」とは、「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」をいう

また、売春行為の斡旋や場所の提供も売春防止法に抵触するらしいので、大阪会場の逮捕にはこちらが適用されたのだろう。
金銭の授受がないのに売春扱いなのは不思議だが、上記の記事を見ると女性はギャラを受け取っていたらしい。
静岡会場の場合は「公然わいせつ幇助」で主催者が、「会場にいた複数人の前でわいせつな行為をしたなどの疑い」で参加者が逮捕されている。


双方ともに記事を見る限りは強制的にやらされていた参加者は確認できないので、紹介した乱交パーティにおいては誰も被害者がいないと思われる。
誰のために摘発されたのか分からないのでもうちょい法律を柔軟にしたほうがいいと思うのだが、例えばどっかの政治家が法改正のために動いたとして、「あいつは乱交パーティ合法化のために活動している」と言われないとも限らないので誰もやらないだろう。
結局、たまに思いついたかの如くソープが摘発されるようなもので、警察がみせしめとしてやっているだけだ。
後者の静岡県での乱交パーティは120人が参加していたとのことで、エロのパワーというのはやはり物凄い。
インモラルなことを興奮の材料にしたい気持ちは理解できるが、何事もやりすぎ家庭教師なのは良くないということだ。


仮にこういうパーティのような後腐れのない集団だったとしても、やはり自分のプレイを人には見られたくない。
見られたくないし、たぶん他人のプレイを見てたら確実にチンコが軟化すると思う。
おっさんが女性の顔面ベロベロするところなんて見たいか?(しかもおっさんはそれを見せて興奮するものとする)
AVでもそんなの見るのキツいのに、間近で見たら日常生活中にフラッシュバックしてくることうけあいだ。
120人もいれば同好の士と言えども確実にヒエラルキーが形成されるから、隅っこで見てるだけのやつとか出てくるだろうし。


ちなみに昨年、こんな預言者がいたらしい。

anond.hatelabo.jp

内容を一部抜粋。

ハプニングバー経営層と乱交パーティー(商業)主催者層の間で、1-2年内に大揉めになると予想しています。
最悪の場合には、お互いを警察に通報しあうような泥沼になるでしょう。

そして今年、上で紹介した静岡会場の乱交パーティ騒動のおよそ一か月前に渋谷のハプニングバーが摘発されたらしいのだ。

www.news-postseven.com

最初は好事家同士で密かに楽しんでいたのが、金の匂いを嗅ぎつけてきたやつが商売にし、利害が絡むと泥沼になるのは乱交パーティに限らずよくあることだ。
人に迷惑をかけるものではない限り、全ての性癖は尊重されてしかるべきだと思う。


男らしさ・女らしさの押し付けがよろしくないとされつつあっても、男社会においては友人同士だけでなく、職場での飲み会後に連れ立って風俗に行く文化はまだまだあるだろう。
そうすることによって絆を深めるという考えを否定はしないが、ぼくのような考えやその他諸々の事情があって行きたくない人もいるわけだ。
個人的には、上司や先輩の威厳を保つためには行かないほうがいいと思う。
部署の朝礼でビジネス論を語ったり、後輩を叱咤していても、「でもこいつ嬢とディープキスしてたしな」と話半分で聞かれることになるだろう。
嬢に赤ちゃん言葉を使ってたようなやつに仕事術を教わりたくないし、大人なら切り分けて考えるべきなのかもしれないが、ものには限度というものがある。
受け手に気を遣わせるよりも、大人であれば自分の言動が相手にどういう受け取られ方をするか考えるべきなのだ。
軽々しく職場のみんなで風俗に行くものではないし、部下の目の前で嬢のおっぱいを揉むものではない。

それと You wanna be my Friend?

ボーカリストであるAdoちゃんについてこのブログで2回ほど書いたことがある。
一度目は、うっせえわってなんか痛い歌だなあという内容。
二度目は、アルバムが出たしサブスクで聞いてみたけど結構良かったという内容。
結局その後Adoちゃんのアルバムは購入して聞いているのだが、歌詞カードに書いてあったスペシャルサンクスがシンプルでよかった。
「家族」とか「全てのボカロP」が挙げられており、そのシンプルさを見て思い出したことがある。
ぼくの友人が高校生の頃CDを出し、地元のCD屋に並んでいたことがある。
もらったか買ったか忘れたけど実物を所有していたのだが、彼女のスペシャルサンクスは家族から友人から彼氏からずらっと列挙されており、歌詞カードの1ページの半分以上を占めていた。
ここまで列挙してあったらもはやスペシャル(特別)ではないし、「友人一同」とかにしといたほうが角が立たなくていいのになあと思ったのだが高校生女子の人間関係はそう単純ではなかったのだろう。
スペシャルサンクスとして名前を挙げられることが「女の輪」を保つための手段であって、わざわざ名前を載せたという事実が重要なのだ。


そんなAdoちゃんが今夏公開されるONE PIECEの新作映画に出演するらしい。
映画のキーパーソンである歌姫の歌唱パートと、主題歌を担当するとのこと。(日常パートは声優がやる)
市場規模が大きくて話題性があるから仕方ないけど、ONE PIECEの映画はとにかく芸能人を使いたがるので嫌なのだが、歌パートのみの担当というのなら理に適っている。

game.watch.impress.co.jp

今までワンピ映画(尾田先生監修版)に出演した芸能人でよかったのは、一作目と三作目の竹中直人と、四作目のユースケ・サンタマリアくらいのものだった。
しょうもないアイドルやフジテレビのアナウンサーを起用するの本当にやめてほしい。


ONE PIECEはここにきて今まで伏せられていた事実が明らかになる展開が多く、「伏線の回収がすごい」という意見をよく見る。
いかに伏線回収がすごいかが漫画の面白さの指標になってる気がするし、ONE PIECEに限ったことではないのだが、伏線だと言われている場面のほとんどが「設定を回収しているだけ」なのだ。
ONE PIECEの空島編で説明してみよう。
ルフィたちが空島に行く前、猿山連合軍とサルベージ船を巡ってわちゃわちゃしているときのこと。
海域に夜が来て空に巨人の影が現れる展開があった。
夜が来るのは上空に空島が来て日の光が遮られているからで、巨人は空にいる人の影が映っていたことが空島編クライマックスで明らかになる。
空に大写しになったルフィの影と、黄金の鐘の音と共にクリケットさんが解説をする展開は屈指の名場面でぼくも大好きなシーンなのだが、あれを「伏線回収」と言っているのをたまに見かける。
他にも、ゾウ編で登場したズニーシャの正体や光月家の謎なんかも「伏線らしき重要そうな内容」と言っているアニメ・漫画系のwebサイトを見たことがある。


当時は何の意味もないと思っていたけど、後になって実はそうだったのかと気が付くものこそが伏線だと思う。
空島の件もズニーシャや光月家のことも後から作者が描こう・回収しようと思っている「ストーリー」「設定」であって伏線とは違う。
いかにも怪しい人物の正体や、詳細が明かされていない事柄なんかは後から説明があることが決まっている。
正体を考察して答え合わせに一喜一憂するのならともかく、正体が語られること自体は尾田先生だけでなくどの漫画家もやっていることだ。
「謎を明かす」という単純なことがこれだけ盛り上がるのは見せ方がうまく、発想力や構成の凄さに驚愕している人が多いということだろう。
例えばルフィが子供の時点で海賊として名を挙げていたシャンクスが最弱の海である西の海にいた理由が、世界政府からゴムゴムの実を奪うためだったというのは伏線として成り立つと思う。
ONE PIECEは100巻を超える超長期連載であり、忘れていた頃に明かされる事実も珍しくないわけで、それを「数年越しの伏線回収!」と間違った持ち上げ方をするのには疑問を呈したい。


ちなみに、冒頭で話したCDの子は数年後の成人式の日、思わぬ再会をすることとなる。
成人式後の集まりまで時間を潰そうと小中の同級生と喫茶店に入ったとき、奥の席で彼女とその父親と思われる人と、彼女が高校当時付き合っていた彼氏(成人式時点では別れていた)と三人で何やら深刻そうな話をしていたのだ。
彼氏はこちらに背を向けていたので表情は見えなかったのだが、向かいに座っている彼女は俯いて浮かない顔をしていたし、彼女の隣に座っている父親は明らかにキレていた。
本人に聞くにも聞けず今に至るのだが、あれは一体何だったんだろうか。
当時もまだ付き合っていれば筋の通らんことでもあったのかと思うが、高校のときに付き合っていた彼氏を父親同席で引っ張り出してきて今更何の用があるのだろう。
彼は高校生にして彼女に暴力を振るうDVサラブレッドであったのでそのことを蒸し返されたか、成人式の前に再会して盛り上がってしまって生セックスからの妊娠コンボでも決めたのか不明だが、父親が出てくるなんてよっぽどのことがあったと思われる。
彼らが喫茶店で何をしていたのかと事実が明かされることも単に「事実の開示」であって「伏線回収」とは違うのだ。

5月に読んだ本

以前、Twitterでバズった投稿に「小1の息子はYoutubeを至高の娯楽で本は音の出ないゴミだと思っている」という旨の内容があった。
承認欲求の化物がしのぎを削っているTwitterで話題になるためには強い言葉を使う必要があるとは言え、随分と品のない物言いだなと軽蔑したのを覚えている。
小1の息子が本のことをゴミと言ったのか、親が息子の考えを代弁しているのかは分からない。
前者であればどういう教育を受けているのか知れた子供だし、後者であれば本のことをゴミ呼ばわりする親に育てられた子供なんぞロクな育ち方をしないだろう。
強い言葉を使うだけでなく主語がデカいのもSNSの特徴なので、あくまでもそいつの子供がそうなのであってお前がそういう育て方をしただけの話だ。


できるだけ毎月更新していこうと思い、3月から始めたレビュー企画。
仕事も落ち着いてきたので、じっくり読書のできる時間が取れてよい。
がんばってネタバレなしで紹介していく。

十角館の殺人

途中にどんでん返しがあるというのは聞いていたし、裏表紙にも『ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!』とあるので、警戒しつつ読んでいた。
ところが件の箇所が自分の想像を超える内容だったので、「ひゃー」となってしまった。
「ひゃー」となりたい人はぜひ読んでほしい。
本格ミステリとされているけど、予備知識とかなくても十分に楽しめる作品。

極端な話、「謎」も「論理」も全く重視されず、いわんや作中に存在すらしない、そんな小説までが「ミステリー」の中に含めて語られてしまうような状況が、現在ではもはや当たり前になってしまっているのです。

という作者コメントをあとがきの筆者が引用していたのが印象的だ。
コメントについては深堀りされていなかったので詳細は掴みかねるが、作者さんにミステリーとは何ぞやというのを聞いてみたくなった。
本屋に行けば、アニメっぽいカラフルな絵柄で”なんとか探偵の事件簿”みたいな「半ライトノベル」的な小説が多いが、こういうのはきっと狭義のミステリーには含まないのだろう。(そういう作品がダメだと言っているわけではない)


快楽主義の哲学

まえがきを三島由紀夫が書いている時点で激熱だった。
「快楽」と銘打っているものの性的快楽を特筆しているわけではなく、満ち足りた生活を送るためのアイディアが記されている。
御仕着せの娯楽なんか抜け殻で楽しくないから、自分なりの快楽を追求しようぜ!ってスタンス。
特に、「性器の優位性」ってワードが気に入った。
どういうことかと言うと、人間の性感帯は性器に集約されている。
それは、近代化に伴って労働が細分化されていくに従って身体の機能も細分化されているから、肉体が労働としての役割に特化して性感帯としての機能を失いどんどん非エロス化が進行していっているからであると。
で、性器の優位性を解消するためにはどうするかと言うと「全身を性感帯にする」ことが望ましいとのこと。
全身を性感帯にすることで性行為はもちろん、仕事なども楽しむことができるとのこと。
詳しくはぜひ本編を読んでもらいたい。
確かにぼくがちんこや乳首の立場だったら、足の指とかにめっちゃマウントを取ると思う。
奇抜なことが書いてあるように思えるが、作者のメッセージは前向きでシンプルなものだ。
「歌ってみなければ歌の楽しさが分からないように、楽しいから笑うのではなく笑うから楽しいのだ」
「仕事だったり毎日の生活だったりを懸命に楽しんで、死の想念(ネガティブなこと)を跳ね除けよう」

日常生活の大きなウェイトを占めている労働を楽しむためのひとつの案として、筆者は全身性感帯を推奨しているというわけだ。

椿姫

この作品を読んでいる最中に話題のお嬢様VTuberがデビューしたので、キャラは全然違うけどもヒロインと重なってしょうがなかった。
フランス文学は今のところ全部面白い。
高級娼婦マルグリットと青年アルマンの恋愛物語。
「娼婦」と翻訳されているが娼館で働いてたり路上で客を取ったりしているわけではなく、貴族や金持ちの愛人である「囲われ者」というニュアンスのようだ。
読んでいて思い出したのは、鬼平犯科帳の1巻に収録されている「暗剣白梅香」という話だ。
ざっくり言えば「過去に囚われていた自分と決別して未来に生きていこうと思ったところでその過去に殺される」という内容なのだが、何だか琴線に触れるものがあったので覚えている。
椿姫のキーワードは「贖罪」だと思う。
マルグリットにとってこの恋が償いの意味も込められているのは読んでいてこちらも苦しかったし、アルマンもやたら高いプライドは置いといて理解してやれよ!と憤慨しながら読んでいた。
罪だの許しだのって言葉は使い方や使う人によっては傲慢な言い回しになるから、安易に言うものではないなと実感した。
昔だったらマルグリットとアルマンの恋を応援してたろうけど、子供がいてもおかしくないような年齢に自分がなると周りの大人たちに共感してしまうようになりましたなあ。
最近読んだ本で面白いのあった?と聞かれたら確実に勧める作品。

るろうに剣心明治剣客浪漫譚・北海道編 7(既刊)

剣心が北海道にアイヌ埋蔵金を探しに行く話ではなく、西南戦争で戦死したはずの薫の父親を探しに行ったらめんどくさいことに巻き込まれたという話。
ファンなら知っていて当然であるけども、北海道編は連載当初から構想にあった話だ。
そのため作品の評判がどうであろうと、幾度となく妄想した好きな漫画の続編が読めるのは単純に嬉しい。
今回の巻は新選組がメインであり、長倉新八に続いて元新選組隊士が登場する。(これは単行本の裏表紙にも書いてあるのでネタバレではないと思いたい)
そしてその登場人物が斎藤を揶揄するシーンがあるのだが、いつまでも好き勝手生きてるぼくにはかなり刺さるやりとりだった。
斎藤って人気のあるキャラだし、その名台詞をいじるのって結構な覚悟が必要だと思うし賛否もあったと思う。
斎藤が気にしていたかはさておき、読んでた人には効いただろう。
ところが言った当人も「あの頃」にこだわってるので、今回の新選組メイン回は過去をこじらせた男たちの話なのだ。
悔いの残る青春、本懐を遂げられなかった青春、たまに取り出して眺める青春、いつまでも心の真ん中に居座る青春、いろんな青春を抱えてみんな必死に生きている。
維新の敗者側であった幕府側や新選組って、時代に取り残された武士とどんどん近代化していく明治時代をどんな気持ちで受け止めていたんだろうか。
ところでまさかとは思うけど、敵側の首魁が土方ってことはないだろうかとドキドキしている。
本誌で追いかけていた頃、左之助が台詞と後ろ姿のみで登場して次回に続くとなり「おっ」となったところ、その後作者が例のあれで書類送検されてしまい連載がしばらく止まっていたのは今でも忘れない。
和月先生!ぼくもToHeart好きです!!

自虐の詩 上・下(完結)

阿部寛中谷美紀主演で映画化されたこともあるらしく、「日本一泣ける4コマ漫画」という日本一センスのないキャッチコピーが付いていた。
正直、これほどまでに感情移入できない作品も久しぶりだった。
この作品の本質は下巻にあるというのは聞いていたので全部読んだが、予備知識がなかったら上巻で挫折していたと思う。
無職の夫とそれを献身的に支える妻の話で、上巻では働かない夫に振り回される妻を(お互いの過去も挟みつつ)ギャグ4コマで延々と描いている。
ときおり夫が妻に見せる優しい態度がDV旦那のそれを連想させた。
夫は計算して妻に優しくしているのではなく、気まぐれだったり自分の振る舞いに罪悪感を抱いてだったりの思いやりなので、一応は人の心はあるようだがそれなら働けばいいだけの話である。
過去の夫とあまりにもギャップがありすぎて、なぜここまで変わってしまったのか、どうして仕事をしないのか本当に不思議だった。
直接的に夫が暴力を振るうことはなく、気に食わないことがあるとちゃぶ台をひっくり返すのだが、妻に当たらないように角度を調整しているとのこと。
妻もそれには気付いていて「心根は優しい」と言っているが、なんかもう共依存みたいで見てられんかったし、優しさとは何だろうかというのを考えさせられた。
もし実体験がある人がいたら教えてほしいんだけど、どん底にいた自分を救い上げてくれた人がいたとして、その人がその後上記の旦那のような人間になったとして、その人のことをいつまでも支えて一緒にいようって思うもの?
助けてくれて本当に嬉しかったって気持ちを人質に取られてるようなもんじゃん。
この漫画に関しては、旦那が過去の恩を笠に着て傍若無人に振舞っているわけではない。
ただ妻に関しては「優しくされた思い出」にいつまでもすがっているように見えた。
過去がどれだけ辛かったか、助けてくれたときどれだけ嬉しかったか、それは人によって違うから一概には言えんけど。
恩義だって感謝だって摩耗すると思うけど、そんなことないんだろうか。
ジュディマリさんも言うてはったで「想い出はいつもキレイだけど それだけじゃおなかがすくわ」って。
まあでもこの人らがおなかがすかないのは、想い出の中だけでなく今も幸せだからなんだろう。
作品についての捉え方、解釈の違い、それによって感じたことをここまで考えてみたのも久しぶりなので、そういう点では読んだ意味はあった。
「ヤンキー実は良い奴」という風潮が嫌いなので、つまらんわけではない、あくまでも合わなかったという作品。


mezashiquick.hatenablog.jp

mezashiquick.hatenablog.jp

インダストリアル系女子

みんながお世話になったことのあるだろう、明日花キララ氏が整形を公表した。
まあ諸兄からすれば「そうだろうな」くらいのことで特に驚きはないだろう。
彼女は見る度に顔が変わっており、過去の映像を見るとこれはいつのVer.であるか特定できるAVソムリエもいるとかいないとか。

yorozoonews.jp


元々美人だったので改造する必要もないだろうと思うのだが、そこはまあ本人にしか分からない何かがあるのだろう。
冒頭で「みんながお世話に」と言ったが、見栄を張っているわけでもなんでもなく、ぼくは彼女では抜いたことがない。
好きだと言う友人もいるし、美人だとは思うけど抜けない。
どうも整形丸出し、豊胸丸出しの人は人工感が強くて無理なのだ。
不気味の谷というか何と言うか、すっぴんが一番美しい思考ではないけれども物事には限度があると思う。

e-words.jp

仰向けになっても形の崩れないおっぱいなんてどう考えても不自然だ。
興味のある人は調べてみてほしいが、深田えいみとかもインダストリアル感が前面に出すぎている。
他にも、好きな女優の作品を掘っていたらあるときから急に乳のボリュームが増したという体験談もある。
まあぼく自身の体験なのだが、以来その女優さんは豊胸前の作品しか見ていない。


明日花キララはどこぞの調査で「なりたい顔ランキング」上位なのだそうだ。
この人の顔に憧れている人が多いというのは聞いたことがある。
昔、テレビでキャバ嬢のドキュメンタリーを見たことがあるが、同じ金型で作ったかのように全員キララ顔だったのが印象的だった。
ああいう目鼻立ちのくっきりした顔は夜職に受けるだろうから納得はできる。
しかし、似たような顔が街にいることは恐怖ではないのだろうか。
メイクや髪型にもトレンドがあるから、ある程度顔面が似通ってしまうことは仕方がない。
ところが整形の場合は土台から工事しているので、ベースから似てしまうわけだ。
整形を決断した理由はいろいろあるだろうが、結局周囲に埋没してしまうのは悲しい気がする。


ちなみにこれは以前ネットで話題になった画像。


結局、かわいいとされる顔は時代によって異なるのだ。
大体の人に独創性がないように、みんな流行っているものに飛びつく。
自分が精通している分野ならともかく、未知のジャンルなら売れているものや好きな有名人が使っているものを選ぶこともある。
SNSでの顔面修正は今や当たり前となったが、誰もが巨大な目玉で鋭角な顎に画像を加工しているところからも、美の価値観がその時その時で偏ることが分かる。
平安時代は下膨れの顔が美人の条件とされていたように、今の美的感覚では考えられないような顔面が異性を引き付けていた頃もあった。
どんな美しいとされる顔もいつかは時代遅れになるのだが、その際に古くなった顔面はどうするのだろうか。
顔面が左右対称であるとかの基本的な造形美ではなく、いかにもその時代の顔だなというやつだ。
土台が決まってしまっているからメイクでごまかすのは限界があるだろうし、時代が変われば顔もマイナーチェンジして暮らしていくのだろうか。
目の下になめくじがいるかのような涙袋なんか確実に今だけの流行りなので、人工物入れてしまった人はいつか除去しに行くのだろう。
豊胸手術をした人が、年齢を重ねても垂れてこない形の良いおっぱいに違和を感じてシリコンを抜きに行くという話も聞いたことがある。


どれだけ整形を疑われていても、どれだけぶっちゃけるキャラでも、顔面がインダストリアルであることを公表するのは勇気がいることと思う。
いくら疑惑があっても認めなければ100ではなく、99と100には大きな隔たりがある。
元AKBの某氏はおおっぴらなキャラなのにいじっていることをカミングアウトしないし。
いつか白石麻衣に寄せました」とぜひ告白してほしい。
あのキャラならいける。