公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

3月に読んだ漫画

マンガ大賞2022が発表された。
ノミネート作品の中で唯一買っていたのが【ルックバック】だったのだが、惜しくも2位だったようだ。
まあルックバックは散々いろんなところで紹介されたし絶賛もされたわけだから、そろそろ他の作品に目を向けてもいいと思う。
「何一つ知らない作品ばかりです」というコメントをわざわざ書き込み、謎に無知をアピールしているヤフコメ勢が本当にしょうもない。
めちゃくちゃ漫画を読んでいるわけではないが、3月は読んでいる漫画の続刊発売日が重なったのでちょっと紹介する。
あらすじの説明はほとんどしないんで、気になった方は各自で調べてみてほしい。
ネタバレあるので一応注意で。
おまけもあるよ。

破壊神マグちゃん 8

『最終回がよかった作品』と言われて思いつくものがあるだろうか。
大体は最終回のひとつ前が面白くて、最終回自体が心に残っているものって言うほど多くない気がする。
そんな中で、【破壊神マグちゃん】が2022年2月に迎えた最終回は最高だった。
個人的には【まほろまてぃっく(アニメ一期)】の最終回に並ぶ良さである。
ジャンプでは毎週楽しみにしていたのだが、正直単行本を買うほどではなかった。
しかし、あの最終回がマグちゃんをぼく的ベスト漫画にまで押し上げるに至った。
8巻では、「宮薙流々の憂いを破壊する」というマグちゃんの生きる目的が本人の口から明示される。
不滅の存在である混沌の神々も人間との関わりの中で成長していく過程が丁寧に描かれているわけだが、その発露の仕方がいちいちグッとくるのだ。
(サンタ回やお父さん回など、マグちゃんに庇護欲・父性が目覚める話が良い)
8巻までの積み重ねがあってこそのマグちゃんの台詞だし、これが後々最終回まで効いてくるのである。
速攻で本屋に行き、刊行されていた7巻までを購入したものだ。
おそらく9巻で終わると思われるので、8巻はラストのひとつ前となる。
次はたぶん6月発売である、みんなも読もう。
とても良い漫画です。

スノウボールアース 3

宇宙の果てでロボットに乗って宇宙怪獣を倒して地球に帰還したら、地球が氷に覆われていましたという話。
『ポスト進撃の巨人と呼ばれている書評を見たことがある。
人類絶体絶命から始まるあたりが共通点ではあるけれど、進撃の巨人っぽさは感じない。
正直、何でも進撃っぽいとかチェンソーマンっぽいとか思考停止した例えすんのやめてほしい。
一話試し読みが面白かったので買っている。
ロボットとのバディものが好きな上に、ロボのデザインもちょっと間が抜けていてぼくに刺さりまくる作品だ。
でも大体、相方のロボが最終的に悲しい結末を迎えたりするのよな、つらい。
1巻から2巻の半ばまでは、過酷な世界で生き抜く人たちのしぶとさやしたたかさが素敵だった。
地球が氷河期になった環境でも友達を作ることにこだわり、みんなに受け入れてもらえたこの日を一生忘れないと誓う、人見知りの主人公・鉄男のクレイジーな姿もよい。
(みんなが鉄男を歓迎していたのは彼の『救世主』『戦力』としての属性であって、鉄男自身を見てる人ってそんなにいないような気がするがどうか。)
ところが2巻終盤で早々に人類 VS 人類になってしまって、なんか敵対する組織のやつらも薄っぺらいし、ちょっとがっかりした。
3巻で巻き返してくれればなあと思っていたが、結構よかったので安心して読み続けることができる。
敵が小物くさいのは相変わらずだが、別にスケールが壮大な敵だから面白いということもないし、鬱屈したコンプレックスによって曲がってしまった敵役は嫌いではないのでまあいっかとなった。
勇気を出して歩み寄ったのに拒絶されるだけでなく、明確な悪意を向けられて号泣する主人公が今後どういったアプローチをするのか期待。
また、機体が徐々に消耗し、現地の有り合わせのパーツで補強・修理する展開は大好きなので次巻以降の展開も楽しみ。
単行本の帯にはエヴァンゲリオン大好きおじさん庵野秀明氏や、メタルギアソリッド大好きおじさん小島秀夫氏、ワンパンマンの作者ONE氏といったそうそうたるメンバーがコメントをしている。
作者はこれがデビュー作らしいので、ポストどうとか帯コメントがどうの気にせずに伸び伸びと勢いよく書いてほしい。
今回紹介する作品の中では一番アニメ映えしそう。

オッドタクシー 4

どんなものであれ流行っているものが好きではない。
ジャンプで毎週追いかけていなかったら、鬼滅も呪術もきっと見ていなかったと思う。
その点では、この作品を放送当初から注目していた自分の審美眼を称賛したい。
今や人気作となり、4月1日には映画も公開されることとなったオッドタクシー。
2021年に放送されたアニメのコミカライズである。
スポットの当たらない、社会の目立たないところでがんばっている人がたくさん登場するが、キャラは動物で描かれているのでそこまでハードではない。
このアニメの見どころのひとつに声優チョイスの妙がある。
批判されがちな芸能人声優も見事にはまっているものの、当然ながら漫画ではそれは伝わらない。
登場する度にTwitter2ちゃんねるの実況スレッドが湧いた矢野のラップも聞けない。
そのため、オッドタクシーはアニメから見ることを強くお勧めする。
漫画はアニメに比べて若干絵がハード寄りになっていてちょっと怖い。
あとは怪しいところがこれでもかと分かりやすいので、考察しながら読み進めることができる。
何となく映画の範疇まで描いてくれそうな気がするがどうなるか。

一級建築士矩子の設計思考 1

ネットで見つけて面白そうだったので買ってみた。
絵は好き嫌いが別れそうではある。
Amazonでは売り切れで実店舗を3店回って手に入れたので、人気なのかもしれないし入荷数が少ないのかもしれない。
一級建築士である主人公が建物周りのお困りごとを解決していく話なのだが、すごいところは作者自身も一級建築士・1級建築施工管理技士の資格を持ち、実務経験があるところだ。
とにかく情報量が多く、鬼滅と違ったベクトルで説明・解説が大量にある。
更に全く未知の分野だったので読むのに時間がかかるものの、知識欲を刺激し名作を予感させる漫画。
お話の幕間で作者も書いているが、一般の人にもネームを見せて推敲を重ねたらしい。
説明ばかりではテンポを損ねて漫画の体を成さないし、専門的な内容を勢いで進めては読者が付いて来られない。
専門家であるが故に自分の常識で語ってしまうことから、読者との知識の乖離については特に気を使ったのだろう。
漫画家さんは頭が沸騰するくらいの勢いで毎回のお話を考えていると思うが、この漫画は描くのが難しいだろうなというのが伝わってくる。
ニッチな分野の漫画は好みなのだが、いまいち読みづらいものや好みでないものが多い中、膨大な情報量すら心地いいと思える。
ちなみに、作者名になんか見覚えがあるなと思って調べてみたら本当に見覚えのある人だった。
最近は成人漫画を描いている人が一般紙に来るケースが増えました。


ジャンプ以外の漫画を読もうと思い立ち、いろいろ探していてなかなか良い作品に巡り合えたと思う。
今回紹介した作品も、バトル漫画は一作しかないし。
4月はONE PIECEも出るし楽しみ。
では以下おまけ。


おまけ その1
3月に読んでないけどオススメしたい漫画

  • 鍋に弾丸を受けながら

「だんがん」ではなく「たま」
一言で言えば美少女が世界の美味しいものを食べるグルメ漫画
原作者は釣りが趣味で海外にも度々出向いており、その一環として各国のうまいものを食しているらしく、ほぼノンフィクションのようだ。
しかし、ただ美味しいものを食べているわけではない。
「治安の悪い場所の料理はうまい」「危険とされるところ、グルメでは絶対に赴かないところでは20点か5万点のものが食える」という信念のもと、一般の観光客が行かないようなエリアでの食を堪能している。
マフィアのお店、アマゾンの奥地、南米のスラム街など、他人に勧めることすら躊躇するエリアばかりだ。
食べ物が美味しそうなのはもちろんだが、現地の空気感や現地人とのやりとりが魅力的で、旅情を誘う内容になっている。
また、作者の謎のコネクションというか人脈の広さも見ていて気持ちがいい。
「日本のスーパーは醤油と味噌だけで棚が埋まっていてビックリした」というアメリカ人の台詞があるのだが、食文化はカルチャーギャップを味わうのに最適なのかもしれないと思った。
3/30現在、冒頭の3話と最新4話がwebで無料で読めるので興味のある人はぜひ。
(ブラジル人のロドリゴさんが出てくると大体面白くなる)
ちなみに作者インタビュー曰くネタのストックはそんなにないらしい、とても残念。


おまけ その2
買おうかどうか悩んでやめた漫画

  • ハコヅメ~交番女子の逆襲~

警察官として勤務経験がある作者の警察漫画。
基本はおちゃらけた内容だが、職業的にシリアスだったりセンシティブだったりする話もある。
(以前、子供にチャイルドシートを装着することの重要性を語る回が話題となった。)
踊る大捜査線が実際の警察官にどんな影響を与えたかがちょいちょい書いてあってニヤッとさせられる。
男社会である警察組織において女性警察官の果たす役割や、女性としてのライフプランについて事細かに書いてあり、作者自身の体験に勝るものはないなと実感した。
画力がどんどん上がって藤部長や桃木分隊長がどんどん美人になっていく一方、川合が加速度的にサイコになっていくのが愉快。
しかし、ドラマにもアニメにもなったので購入には今更感があるところ。
アニメは面白いが、原作の独特なテンポが活かせていないのが残念。
あとOPとEDがとにかく古臭いのが気になる。
たぶんぼくがこの漫画を好きなのは銀魂っぽいからだと思う。

  • 明日、私は誰かのカノジョ

通称【明日カノ】
レンタル彼女、パパ活女子、整形中毒、ホスト狂いなど、コンプレックスや問題を抱えつつも懸命に生きている女性を描いた漫画。
ちょっと前に3巻までkindleで無料公開していたので、買おうかどうか悩んでいたらドラマ化の流れになってしまった。
「ドラマ放送中!」の帯が付いた漫画を買うことほど個人的に寒いことはない。
ジャンプ脳であるぼくにとって全然優しくない漫画で、読んでいると心の中のタコピーが「わかんないっピ…。」を連呼する。
綿密に取材をして書いてるっぽく、特にホスト編はかなり反響が大きかったようだ。
登場人物のひとり、【ゆあてゃ】の正しい発音が気になる。
電子で買うかもしれない。