公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

ゴールデンカムイ最終回に添えて

ゴールデンカムイが本日4/28に最終回を迎えた。
以下に感想を書いていくが、ネタバレ多数なので要注意で。

テーマが重たいだけに、最終話のタイトル通り大団円でよかったと思う。
以前にも書いたが、最近バッチリ全巻購入している。

mezashiquick.hatenablog.jp

最終回は少し駆け足な感があったので、単行本でバリバリ加筆されることを期待したい。
個人的にはチカパシとエノノカのことも補足してほしい。


この作品の良いところは、どんな頭のおかしい人間でも逃げずに自分の業と向き合っているところだ。(だからか知らないが生き生きと楽しそうなやつが多い。)
どうしようもない家庭環境・性癖・トラウマ・弱さ・罪など。
それらに振り回されつつも抜け出そうとあがいて立ち向かって、己を丸出しにして殴り合ってぶつかり合って誇りと尊厳と生き様を獲得する。
結果的に人が死んだりしているので、行動が正しいかどうかはさておき。
そして最後にはみんな満足して死んでいくのだ。
辺見の言葉を借りるなら、「命の煌めき」を見る物語だった。
房太郎のように夢半ばのやつもいたが、意志は白石に受け継がれたので、白石が王となった国で房太郎のことは語り継がれているだろう。
白石って湿っぽいのは嫌いといいつつも、房太郎との約束は忘れなかったり、キロランケのことも気にかけていたり、杉元とアシリパさんにコインを送ったり、割と義理堅いやつだ。


満ち足りて死んでいく者が多いからこそ、土方の最期の言葉が「悔しいなぁ…」なのは悲しかった。
ぼくは新選組が好きなので、どうしても土方贔屓なところがある。
史実では死んでいた彼だから、ゴールデンカムイでも死んじゃうんだろうなあとどこかで覚悟はしていたのだけれど。
「この世に恨みを残した悪霊」「死に場所を探している」などと散々な言われようで、過去に囚われているかのような印象を受ける土方だったが、彼なりに日本のために戦い、日本の未来を見据えていた。
土方の形見である和泉守兼定が杉元を救っただけではなく、アシリパさんの助けになってアイヌの未来に役立ったのは土方としても本望だったろうし、キムシプから受けた恩を返すことにもなった。
好きなキャラが死ぬかもしれないというのはこの作品においてはみんなが思っていたことであり、余裕をぶっこいていたのはアシリパさんと永倉新八ファンくらいのものだろう。(永倉は大正4年に病死する)


個人的にはアシリパさんって子供なのにえらいもん背負わされてんなあと思った。
割とこじらせた男性が多い中、その願望が全て彼女に集中していくのはしんどいだろうなあと。
一緒に旅をしてきた大人たちが五稜郭や列車の中で次々に死んでいくのを目の当たりにしているし。
ウイルクやキロランケから託されたアイヌの未来、杉元のアシリパさんを庇護したいという欲求(後半はマシになったけど)、兄貴とアシリパさんを重ねて孤独を癒してくれる存在を求めていた尾形、ゴールデンカムイの呪いに巻き込んだ恨みをアシリパさんにぶつけてくる鶴見中尉。
彼女が自分の道を決めるまでには相当のストレスがあったことだろう。
最後は杉元と北海道に帰って、おいしいものを食べてヒンナヒンナしてくれてそうなので何より。


ぼくはSNSとかはやっていないし、身近にゴールデンカムイのファンもいないけど、多くの人とリアルタイムで最終回を共有できるって素晴らしいことだと思う。
作者さんや出版社の心意気に応えるためにも単行本は購入させてもらったし、これからも応援していきたい。

おまけ

好きなキャラ3人(順位とかはない)

  • チンポ先生

自分の完璧を、アシリパさんをかばって死ぬ今だとハッキリ言った紳士で格好よすぎるチンポ先生。
鉱山に閉じ込められた杉元と白石を救出したり、ガレキからインカラマッちゃんをかばったり、チンポ先生は紳士なのだ。
インカラマッちゃんと谷垣が想い合っていることを察して、彼女に手を出そうとしなかったし。
万が一にでも生きていて、偽アイヌが潜伏していた村で子種をばらまいてほしい。
あと個人的には強敵と戦ってほしかった。
後半は割とまともな面が目立っていたけど、師匠の不細工な妻を寝取って報復に来た10人を返り討ちにしたり、性欲が旺盛すぎて定期的に女性を抱かないと不安定になったり、やっぱり頭おかしい。
アシリパさんも最後の列車までハンペンを持ち歩いていたあたり、本当に懐いていたのだろう。
その男のチンポが紳士かどうか”抱かせて”見極めろ、男を選ぶときはチンポだ。

  • 二瓶鉄造

勃起おじさんこと二瓶鉄造。
アニメ版は声優が大塚明夫さんで最高だった。
結局エゾオオカミを仕留めることができなかったのに、自分の死に方を「悪くない」と言える潔さ。
オオカミが最後に見る人間でありたいと言っていたけど、自分のように執念深い人間がレタラ達にとって今後現れないだろうことを見越していたのかもしれない。
彼の「ひとりで立つ」、勃起の精神は谷垣からチカパシへ村田銃と一緒に受け継がれたのである。
最終話で谷垣も二瓶と同じく子供を15人作っており、一人だけ女の子であとは男の子という構成が二瓶と逆なのも受け継がれていて笑った。
辺見にせよ二瓶にせよ、金塊に頓着しないタイプの囚人は好きだ。
序盤でいなくなるのが惜しい、強烈なインパクトを残したキャラ。

  • 鶴見中尉

特に思い入れはなかったけど、最終話ひとつ前の話にやられた。
形見である妻と娘の指の骨が線路に落ちていくときの一瞬目に光が入る表情、最高だった。
形見ではなく権利書を選んだあたり、月島と鯉登に語った「個人的な弔いのためだけに道をそらすなどということは断じてない」というのは本当だったのだろう。
だがそのあとにアシリパさんに向けて言い放った「愛するものはゴールデンカムイにみんな殺される 全部お前の責任だぞウイルク!!」というセリフも真実なのだと思う。
本当は鶴見中尉も形見を選びたかった、個人の意思で動きたかったんだろうけど、権利書を選ばざるを得なかった。
そうさせたのはゴールデンカムイの呪いとそれに自分を巻き込んだウイルクであり、彼への恨み言を娘であるアシリパさんに向けたのだ。
きっと、日露戦争で砲弾に頭を吹き飛ばされたとき、鶴見中尉の魂は既に抜けかけていたのだろう。
魂を額当て(大義の暗喩だと思う)で無理に押しとどめていたけど、それもなくなって形見も権利書も金塊も失って、魂を繋ぎ止めておくものがなくなってしまったのだ。
妻子や部下などあまりにも多くのものを犠牲にしたために戻れなくなってしまったところに、ダメ押しで大切なものがなくなってしまってはあんな表情にもなるだろう。
杉本も鯉登も夏太郎も傷が増えていたが、あの傷は彼らの魂を抜くに至らなかったし、まだまだこの世での役目を終えていなかったのだ。

好きな扉絵

  • 55話

ドリフが好きなので初見で爆笑した。
アニメでアイキャッチとかになってくれんかと思ってたけどならなくて残念。
チアをやってる家永と、チンポ先生がいかりやさんポジションなのがいい。
サカナクションのPVだって言ってる人もいるらしいけど、そっちは知らん。

  • 155話

Doorsの2ndアルバム【Strange Days】のジャケットが元ネタになったやつ。
このアルバムは好きなのでニヤッとした。
155話はヤマダ曲馬団の話だし、サーカス繋がりだろう。
チカパシのポジションにいる子供、こんなに顔にシワあったっけと思って改めて見たら割とあった。