公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

すべての憎しみよ

少し前、マイメロちゃんに「女の敵は女」というようなことを言わせてサンリオさんが炎上していた。(正確にはマイメロちゃんの母)
女性の敵が女性であると決めつけたいのは男性である、という意見を聞いたことがある。
一方で、女性のやることにケチをつける女性も見たことがあるので、誰が敵なのかは分からない。
じゃあ男性の敵は何なのかと考えたら、ぼくとしては『性犯罪者の男』だと思っている。


anond.hatelabo.jp

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匿名掲示板に投稿された、痴漢被害に遭っている女性の投稿を読んだ。
正直、こういうものを見すぎてしまい、タイトルだけでアレルギーが起こるようになってしまっているけど中身は全く違うものだったので反省している。
"こういうもの"というのは、『女性は苦労している、男は楽』『男のせいで女性が虐げられている』的な、女性を気持ちよくするためだけの都合のいいポルノのような言説のことだ。
漫画やドラマでも多い。突拍子もなく過激なことを言う明らかに叩きやすい男性を登場させ、それを女性や善意の第三者(子供や容姿の整った男性)が成敗してスカッとさせるようなやつ。
『女性生きづらい系』の作品は別にいいのだ、声を上げないと何も変わらないし発表の場があればどんどん公開していくべきだ。
同じ悩みで困っている人の支えにもなる。
けれども大体それにはセットで男叩きもついているので「知らんがな」という気持ちになる。
本当に男が原因の場合もあるだろうけど、生きづらさを全て男のせいにされても困る。
男であるというだけ十把一絡げに悪者扱いされたらかなわんし、性犯罪を犯していない男性や性犯罪を嫌悪している男性に対しても、連帯責任だの男性界隈で自浄作用を働かせろだのという暴論にも飽き飽きしていた。


紹介した書き込みの話に戻る。
被害に遭った女性は努めて冷静に、どちらの性別を揶揄するでもなく、起こった事実と自分の感じたことを話している。
職場には男性が多く痴漢被害に対して理解がないようで、それがより孤独感や無力感を強めていると感じた。
『誰に対してこんな気を遣って文章書いてるんだろうってちょっと思う。』と女性自身も述べているように、もっと怒っていいのにとも思った。
だけどもし、感情の赴くままに痴漢に対する憎悪を書き連ねれば、心無い意見も目にするかもしれない。
痴漢で打ちのめされているところに、他人からの中傷まで浴びたら本当に立ち直れなくなりそうだ。
痴漢に遭ってるときって恐怖だと思うし(この人も”孤独”だと言っている)、会社からのサポートも期待できない以上は本当に孤独でしかないだろう。
当然だが男性に対しても恐怖心があるようで、たまたま助けてくれた男性に非常に感謝している。
正直、男性であることで一括りに警戒されるのはかなわんけど、こうした被害者の声を聞くとそれも仕方ないのかなと思う。
とはいえほとんどの男性は痴漢などしたことがないわけで、納得のいかない部分もちょっとはある。
というのも、ぼくも以前に女性の自衛によって嫌な思いをしたことがあるのだ。


電車に乗ろうとホームにいたときのこと。
いつも乗っている番号の乗車位置があるのだが、既に先頭に並んでいる女性がいた。
並ぶ位置の地面には【二列でお並びください】という旨の但し書きがあるため、ぼくはその女性の横に二列目を作る形で並んだ。
するとその女性はぼくから距離を置いた後にこちらを睨んできたかと思うと、スッと立ち去ったのである。
もちろんぼくに、女性をどうこうしようという気持ちはなかった。
隣に並んだのもいつもその位置で電車を待っていたからで他意はない。
しかし女性はぼくのことを知らないし、考えていることも分からないから警戒対象から外れなかったのだろう。
それにもしかしたら、コロナ禍でのソーシャルディスタンスを警戒したのかもしれない。
いまでこそこうやって冷静に分析できるものの、当時ははらわたの煮えくり返る思いだった。
立ち去る女性の後ろ姿を見ながら、「人通りの多いところで盛大にウンコでも複数回漏らしてくれんかなあ」と念じていた。


というか今でも腹は立っている。
自衛するのは構わんけど、せめて分からんようにやってほしい。
今回の場合だったら睨むってフェーズなしにさっと離れればいいのだ。
彼女の思考として、嫌な思いをさせられたから同じ思いをさせてやろうという節はある気がする。
もしも相手が頭のおかしい人だったら、女性が危害を加えられていたかもしれないのだ。
気が強いのも自衛意識があるのも結構だけど、敵意を飛ばしすぎなのも問題だと思う。
その女性が警戒せざるを得なかった背景もきっとあるに違いない。
今まで生きてきて、男性によって嫌な思いをさせられたことがあるかもしれない。
本当はそこまで配慮して、負の気持ちをぐっと飲みこむべきなのかもしれない。
しかし、女性がこちらのことを知らないように、こちらも女性のことを知らないのだ。
例え公共の場であっても、見知らぬ男性に近くに居てほしくないだろうな、と察して行動してほしいのだろうか?
老若問わず、とにかく女性に近寄らないようにするのが正解なのだろうか?
男性に対する敵意むき出しの女性ばかりだったら、そんな女性によって不快な思いをさせられたら、嫌な気持ちになりたくないから女性を避ける男性だって増えるだろう。


今回のケースに限らず、女性の性犯罪に対する自衛を咎めるつもりは全くない(自衛する必要がないのが一番だけど)
多くの男性は性犯罪に手を染めたこともないし、嫌悪すらしているだろう。
しかし、女性にそれを判断する術がないのも理解できる。
女性が全方位の男性に対して警戒せざるを得ないのは、性犯罪者の男性がいる・いたからである。
ましてや過去に性犯罪の被害を受けたことがあるのなら、男性に対する恐怖心だってあるだろう。
だけどもどうか、全ての男性が力によって女性を思い通りにしてやろうと思わないでほしいのだ。
確かに過激なAVとかもあるけれど、それを彼女やお店の女性に試してみようと考えている人がそこらへんにいるわけではない。
女性のために行動しろとか、無言であることは犯罪に加担しているのと同義などと言う人もいるかもしれないが、姿勢だけでは足りないのだろうか。
これで男女の対立みたいになるのは本当に不毛だと思うし、でも女性が警戒する気持ちも分かるし、本当にどうしようもない。


何が言いたいのか分からなくなったけど、起点はあくまでも自分が嫌な思いをしたくないということだ。
でも、自分が嫌な思いをしたくないからといって他人の行動を強制できないし、逆に嫌な思いをさせるのは新たな憎しみを生み出す。
これはもう、創作でよくある展開みたいに、世界の全ての憎しみを集めるものすごい悪いやつを登場させ、そいつを正しく裁くことで憎しみを浄化する方法しかないのかもしれない。