公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

ゴミ もってかえれ

好きな超能力をひとつだけ授かれるとしたら何を選ぶだろうか。
超能力という言い方をしたけれど、人知を超えた力なら何でもいい。
不老不死・透明化・未来予知・瞬間移動・精神操作・念動力などなど、もし自分に超常の力があったらと妄想した人もいることだろう。
とりあえず男女ともにエロいことに使うであろうことは言うまでもない。
ぼくだったら力を授かったのは自分だけとは限らないので、しばらくは人の目に触れないところでひっそり使う程度で大人しくしていると思う。
例えば透明化の力を授かったとして、持続時間や有効範囲、身体へかかる負荷などのリスク、障害物をすり抜けられるかといった力の使い方を勉強してから満を持して女子高とかに行くだろう。


大体にして、大きな力を手に入れた人間の末路は、調子に乗って自滅するパターンがほとんどだ。
実は能力者の存在は政府の特務機関的な組織の知るところとなっていて、能力者の能力を無効化する装置的なものが開発されているかもしれない。
もしくは、自分と同じように力に目覚めた人間が国の特務機関的な所に所属しており、他人を害するために能力を使おうとする能力者を粛正しに来るかもしれない。
それはいいとして、ぼくが今の気分で超能力を選ぶとすれば「空間移動系」の能力にすると思う。
この力は他対象に限定されるため、自分自身をテレポートさせることはできない。
自分の視界に入ったものを任意の場所に移動させることができるのだ。
テレポート先は行ったことのある場所限定にするか、見たことがあればOKにするかはまだ決めかねているため、能力の詳細についてはひとまず置いておく。
ぼくがこの力を駆使してやりたいことは「ゴミを不法投棄するやつを粛正する」ことだ。


ゴールデンウィーク真っ最中であるけれど商業施設等の休業が相次いでいるため、昨年同様パッとしない連休だ。
しかし自粛疲れした一部の人たちは街に繰り出していて、けしからんと言う人やまあ仕方ないよねと言う人など、国民総自粛だった昨年とは趣が異なったコロナ模様になりつつある。
そんな中、若者たちの間では「野外飲み」が流行っているらしい。
飲食店がお酒を提供するのをやめたり、お店を早めに閉めたりしていることで、エネルギーの発散場所をなくした若者たちが屋外にお酒を持ち寄って飲んでいるとのこと。
そしてこの行為の副産物として問題視されているのが、飲み終わった後のゴミを片付けずに帰ることなのだとか。
公園や河川敷などのスペースは翌朝になるとゴミが散乱しており、目も当てられない状況らしい。


心の底から思うのだが、ゴミをその場に放置して平気な人間って信じられない。
タピオカが流行ったとき、自販機の横に設置してある缶ビン回収ボックスの投入口に、空になったタピオカドリンクの容器を突っ込む行為が問題になったこともある。
捨てる算段もできずにテイクアウトなんかすんなよと見るたびに腹が立った。
子供の目の前でタバコの吸い殻をポイ捨てする親も見たことがあるが、ああいう親はどの口で教育を説くのだろう。
街角にあるゴミ捨て場にも、明らかにその場所・その曜日では回収してくれないゴミを不法投棄しているやつがいる。
そういうゴミには「ここに捨てんな」みたいな注意喚起の張り紙が貼られ、捨てた人間の良心に訴えかけているが、不法投棄するような神経のやつには響かないのだろう。
まずその時点で違う世界の人間なのだと思える。
もしもぼくが捨てたゴミがいつまでも回収されなかったら、そのゴミを見る度に心臓がキュっとなる。


うちのマンションには、集合ポストの横に小さいゴミ箱が置いてある。
ポスティングされた不要なチラシを捨てるためのものだ。
一時期、そのゴミ箱に関係のないゴミを捨てる迷惑行為が多発したことがあった。
当初は管理会社が張り紙で警告していたものの状況が改善されなかったため、ゴミ箱は撤去されてしまったのである。
すると驚くことに、チラシの捨て場がなくなった住民は集合ポストの上にいらないチラシを放置するようになったのだ。
誰が関係のないゴミを捨てていたか、どれだけの住民がチラシを放置していたかは定かではないが、ルールを守ってチラシを捨てていたであろうぼくを含めた他の住民にとってはいい迷惑だ。
ルールを守らない人の割を食うのは、ルールを守っている人だ。


そんな不届き者を粛正するために、空間移動の超能力を使いたいと思っている。
不法投棄したゴミをそいつの自宅や仕事場にワープさせることができれば、非常に痛快ではないだろうか。
タバコの吸い殻なんかは直接そいつの胃にでも送り込みたいところだ。
生ごみなんかは布団の上に移動させたいし、重たい電化製品は風呂場にでもテレポートさせれば風呂が使えないことと運び出しにくいことの二重のストレスがあるだろう。


正直、野外飲みそのものに関しては全力で批判する気にはならない。
後片付けをして帰らないことは上で散々述べたように言語道断だが、この一年若者たちは散々我慢してきたと思う。
家庭や学校、職場などでの節目節目のイベントが自粛させられ、中途半端に積みあがった思い出と溜まっていくフラストレーションに加え、「コロナが拡散する原因は無症状の若い人たちというレッテル貼りにはうんざりだろう。
若者だって我慢しているのに、その若者が原因でコロナが終息しないかのように言われていたら、自粛をするなんてバカバカしいと思っても仕方がない。
テレビは渋谷や原宿の人出ばかりを映してけしからん若者を作り出したいのだろうが、巣鴨だの浅草だの年寄りが多いであろう街は無視しているあたりが汚い。
年寄りだってカラオケ喫茶でクラスターを発生させているし、政治家のジジイどもは自分の地位と利権を守るために会食をしているし、国にしてみたら「自粛してね」と言って「はい、わかりました」と素直に聞いてくれる国民はチョロいと思っていることだろう。
実際は若者も年寄りも我慢しているんだろうけど、国民の分断を煽る報道の仕方が気に食わん。
あと、前置きが長かった割には超能力を使ってやりたいことのくだりがボリューム不足の感は否めなかったと思う。