公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

スマホを免許制にしよう

今年の冬くらいに、たまたま通りかかったオシャレなコーヒー屋さんに行った。
コーヒー屋さんというか、最終的にはデザート屋さんだったのだが。
コース料理の最後に出てくるようなデザートを単品で注文できるお店で、少々高めではあるが味は抜群においしい。
お店の雰囲気もよく、一人でフロアを担当していたお兄さんもスマートで気の利いた人だった。
その日は寒かったため、水ではなく白湯が出てきたのも嬉しいサービスである。
平日でお客さんがあまりいなかったので、フロア担当のお兄さんとしばらく話をしていた。


各テーブルの上には、「写真撮影は料理のみお願いします」という注意書きが日本語・英語・中国語で掲示されていた。
オシャレなお店のため、撮りたい人は多いだろう。
お兄さんに「やっぱ写真撮りたがる人多いですか?」と尋ねると、よくぞ聞いてくれたみたいな顔をしていろいろ教えてくれた。
最初は写真撮影禁止ではなかったようだ。
場所柄、外国人観光客が多く、マナーの悪さに辟易した結果とのこと。
デザートがサーブされているのに席に着かず、店内を歩き回って写真を撮ったり、大声で騒いだりということが続いたらしい。
「注意しまくっていたらいつの間にか外国人が来なくなったんですよ」と、いたずらっぽくお兄さんは笑っていた。
話しているうちに気が付いたのだが、爽やかで男前な見た目とは裏腹に、お兄さんは意外と皮肉屋なことが判明した。


マナーの悪さは外国人に限ったことではなく、日本人のマナーも良くはないらしい。
手元と料理のみの撮影を許可しているのに、勝手に店内の写真を撮る人は多いようだ。
「ぼくも性格悪いんで、シャッター音が聞こえたら『今、撮りましたよね?』ってすかさず聞きますね」とお兄さんは生き生きと教えてくれた。
作ってる人もフロアのお兄さんも、ベストなタイミングでデザートを食べてほしいと思っているのだが、それを無視されていつまでも写真に夢中だとやるせないと言っていた。


お前のことだぞ、そこのお前。
お店のルールを破ってまで"映える"写真が撮りたいのだろうか。本当に理解に苦しむ。
いくら素敵な写真であっても、実はルールやマナーを守らずに撮影していましたというのは価値がないと思うのだ。
「ちゃんとルール守ってるし」とか思ってるお前、ちゃんと周りに配慮して撮ってんのか。
シャッター音とか結構響くし、他人の写真に写りたくない人もいるぞ。マナーだぞ。
当たり前のように飲食店で店内写真を撮っているやつがいるが、お前の店でもお前だけの空間でもないのによくそんなことができるな。
他のお客さんもいるし、お店の人に許可も取ってないし、どういう理論が成立して勝手に写真を撮っているのか聞きたい。


お兄さんもぼくも、他人の写真に写りたくないことや、SNSがそんなに好きでないことなどから意気投合し、話は大いに盛り上がった。
割とこだわりの強いお店だったのだがそういう主張の強いお店は大好きだ。
自分がそこにハマるかどうかはさておき、今後も面白いお店とのご縁があると嬉しい。
デザート屋さんは本当にいいお店だったので、写真撮影のルールを守った上でぜひ行ってみてほしい。詳細は秘密だけど。