公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

生きたいと願うバカ

教師をやっている友人の結婚式に参加したとき、友人の元教え子が余興でパフォーマンスにやってきた。
友人が以前にいた学校の生徒で、どうもやんちゃな子が多いところだったようだ。
その子も派手な見た目をしていたが、わざわざ結婚式に足を運ぶあたり、友人は慕われていたらしい。
彼は二次会にも来ており、少し話をしたのだが礼儀正しく素直ないい子だった。
パフォーマンス後の挨拶で彼は、「大人は上から目線で信用できないやつばっかだったけど、A先生は違った」という趣旨の話をしていた。
教え子にこんな心からの言葉を言ってもらえるなんて、友人は幸せ者である。
と同時に、彼の生きてきた環境がぼくとは全く違ったものだったんだろうなと思いを巡らせた。


アホみたいなマフラーを付けたバイクに乗ってイキっているやつが、赤信号できっちり止まるのを見ると笑える。
社会に反抗しているように見えて、交通ルールを遵守している姿に本人は矛盾を感じていないのだろうか。
【矛盾】という概念を理解する知能がないからああいうバイクに乗っているのだろうが。
信号で停車している際にも周囲を威嚇するかのようにマフラーを空ぶかししているが、安全圏から虚勢を張っているのが切ない。


また、チンピラみたいな人たちがしっかりとマスクをして街を歩いているのもしょうもない。
「コロナにビビッてんじゃん!」と失笑を禁じ得ない。
そのマスクが迷彩柄とかブラックとか、無造作にバンダナを巻きましたとかのちょっとアウトローなニオイのするやつだったら百歩譲って理解してやってもいい。
だが、不織布のマスクをしていると、帰宅したらきちんと手洗いうがいをしている様が浮かぶ。
もしかしたらマスクを入手するために朝からドラッグストアに並んだかもしれないし、マスクが手に入らないことで焦っていたかもしれない。
無事にマスクを入手できた際は、さぞかし安堵したことだろう。
他の大多数と同じでコロナに怯えている人であり、悪そうな振る舞いをしている分、輪をかけて滑稽に見える。
それとも、あんな見た目をしていながらも、マスクをしていないことで周囲から白い目で見られるのが嫌なのだろうか。
普段もよっぽど軽蔑されているとは思うが。


彼らが不良であることに確固たるバックボーンや主義主張はなんにもなくて、ただ周囲に迷惑をかけているだけである。
【悪いこと=カッコいい】という思考で動いているのだろうが、交通ルールを守ったりマスクを付けたりという社会的な規範に従っている。
それらのことは守らなかったら死のリスクがあるので、恐いもんなんかないぜと無頼な振る舞いをしつつも、死を恐れて生きようとしている様が最高にカッコ悪い。
リスクを跳ね除けてまで突っ張るつもりはなく、ほどほどのところで本能的にブレーキをかけているのだが、彼らがそのことに気が付くことはない。
社会や大人に反抗したい気持ちは分かるが、迷惑をかけるのはいかん。


少年少女ではなく、いい年をしているのにイキがっている大人もいるが、ああいうのを見ているとバカって死んでも治らないんだろうなと実感する。
バカは人間界だから何とか生きていけるのであって、野生に生を受けた場合、あんな甘えたやつは秒で死ぬ。
曲がってしまうのは仕方のないことだが、冒頭に登場した彼がぼくの友人に出会えたように、導いてくれる存在に出会えたことは幸せだ。