公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

そういうのに感動する人たち

まだ、インターネットが一部の専門知識を持った人たちのものだった頃。
いわゆる【オタク】のためのツールだったネットは、一種アングラな雰囲気があった。
ネット発信の文化(Flash電車男など)がたまに注目されるくらいで、【インターネットの意見】というのは明確に区別されていたと思う。
ネットの意見というのは多数派ではない、マイノリティの発言として扱われることが多く、テレビ番組などでネタのように取り上げられることがほとんどだった。


ぼくも本格的にネットをするようになったのは大学生になり、自分のパソコンを持つようになってからだった。
授業でPCに触れることはあっても、それまではせいぜいDOCOMOiモードでポチポチするくらいだった。
あの頃は【パケ死】なんて言葉があった。
今で言うギガの使いすぎ(頭の悪い言葉だが)に相当するだろうか。
ネットワーク通信を使いすぎるとパケット通信料が高額になり、ものすごい料金を請求されたものだ。
当時は携帯でエロ画像が見られるという興奮と、若さゆえの性的欲求のやり場のなさから、自慰と死を繰り返していた。


今は、誰もがスマートフォンで簡単に世界とつながっており、インターネットをしているという意識も薄いくらい、日常的に情報端末を使っている。
そのため、【インターネットの意見】とカテゴライズされることなく、ネットの意見と世論が限りなく近いのだと誰かが言っていた。
ネットで発信されているようなことは、ある種みんなが抱えていることなのだ。


こないだ、ある番組の出演者がSNS上での中傷を苦に自ら命を絶った。
インターネットという特殊な空間で起こったことではなく、リアルに当たり前に存在する人間の悪い部分だと思っている。
ネットによって一部の過激な人や、頭の足りない人の攻撃性が露わになり、今まで学校や職場で行われていたいじめの場がバーチャルに移ったのだ。
「ネットって恐いね」ではなく、ネット上の少数意見でもなく、アホは一定数いて今回たまたま可視化されただけだ。
匿名ゆえの過激さはあるかもしれないが、他人を簡単に傷つける攻撃性はみんなが持っている。
文句を言う人もいるが、ぼくは日本っていい国だと思う。
人を自殺に追い込むような言葉を簡単に発してしまうようなアホでも、一応は文字の読み書きができて、一人が一台情報端末を持てる経済力があるのだ。


ぼくが学生の頃は、【あいのり】がとにかくブームで、放送日の翌日は学校で番組の感想を言い合ったものだ。
やらせなのは当然の認識だったが、高校生というのは想像以上にアホなので、ノンフィクションだと思っていた人ももしかしたらいたかもしれない。
テラスハウスに出演している人がその後タレントになるケースがあるが、テラスハウス出身者って基本的に程度が低いなと感じていた。
良いように言えば、身近に感じられるタレントということだろうか。
あいのり出演者の中には、その後実業家になったりAVに出演したりした人もおり、世間を騒がせていた。
当時の大人たちもあいのりに対して、ぼくがテラスハウスに抱いている気持ちと同じようなことを思っていたのだろうか。
出演者もそうだが、あの番組を本気で楽しんで見ている層も、人としてのレベルが低いなと思う。
ぼくが若ければ、あいのりを見ていた頃のように彼らの気持ちを理解できたのだろうか。
ある人に言われたが、理解できないのは年代どうこうではなく、そもそもの人種が違うからだそうだ。


でもぼくは分かっている。
あんなやらせ丸出しの番組をノンフィクションだと思って楽しんだり、"感謝"とか"愛"とかを自分の言葉で言い換えることなく、そのままストレートに歌った何のひねりもない薄っぺらい歌に感動したりした方が、人生は楽しいのだ。
理屈をこねくり回すやつよりアホの方がモテるし、ぼくの何倍もセックスしているのだ。
人種が違う相手と一緒にいるのは確実にイライラするが、原始人でもいいのでチヤホヤされたいと思うことはある。
あいつらになりたいと思ったことはないが、楽しく生きる才能はあいつらの方が上かもしれない。