公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

"おうち時間"ってなんか気持ち悪い

1月に仕事を辞めて3月頭に再就職するまでの期間、基本的には引きこもっていたので、世間がコロナってヤバいらしいよと気付きだした頃も、トイレットペーパー購入者の行列を尻目に家で寝ていた。
せっかくやる気を出して働こうかと思ったときに、この自粛ムードである。
まさかこんな大ごとになるとは思っていなかったので、どうせならもうちょっとダラダラしていればよかった。


とりあえず洋服屋が営業していないので、服を買いに行けないし、行きたかったアンティークショップも閉まっていて営業再開の目途が立っていない。
買わないまでも見て回るだけでも好きなのだが、それすらもできないのでどうも満たされない。
ぼくのよく行く洋服屋さんはかろうじて営業しているが、ちょっとだけ閉めるかもしれないとオーナーさんが言っていた。
残念なことだが、無理せずに営業してもらうことが第一なので仕方がない。


昨年から今年にかけてはアパレル業界にとって冬の時代だった。
消費増税に加えて記録的な暖冬で単価の高い冬物衣料が売れず、とどめにコロナウイルスである。
人々が外出しないということは服を買いに出ないということだし、そもそも外に出ないのだから外出用の服を買う必要がない。
そのため、最近のアパレル業界は【おうち時間】のためのリラックスウェアや、テレワークでもだらしなく見えなかったり、見栄えよく見えるけど窮屈でない洋服をプッシュしているように見える。
あたかも、物凄い売れてまっせという感じで推しているが、あくまでも少数派の動向であり、わざわざテレワーク用にジャケットを購入する人も少数だと思うので、何とか絞り出した苦肉の策だろう。


最近はオンライン飲み会についてのニュースを見ることが多く、実際にオンライン飲み会をした人の体験談も交え、みんながやっているように錯覚させているが、おうち時間という造語といい、なんでも商売にするなあと感心している。
一時のブームのようなもので、好きな人間の間では続いていくかもしれないが、世間に定着するものでもないと思う。
コロナが終息したら、波が引くようにオンライン飲み会についての話題はサッとなくなることだろう。
コロナウイルスは今後の社会の在り方を変える重大な出来事になると思う。
日々の働き方や家族・友人との付き合い方など、これを機に制度から個人の意識に至るまで変わっていくことが多いだろう。
洋服に関しても、通販で購入するのが今以上に主流になり、実店舗の存在感は薄れていくのではという声もある。
ただ、通販での購入は今がピークというか、発展はとりあえず打ち止めな気がする。
オンライン飲み会の例もあるように、なんだかんだ言って人はコミュニケーションを求めている。
みんな寂しくて誰かと話したがっているのだから、見て触って洋服を購入するという流れが廃れることはないと思うし、廃れてもらっては困る。


よく【ネットで洋服を購入する場合の注意点】のようなweb記事を見かけるが、「ネットで買わなかったらいいのに」といつも思う。
購入する理由や需要があることは理解しているが、現物を見ない買い物はどこか歪になることは間違いない。
断捨離やミニマリストといった考え方がある一方で、ネットで気軽にモノを購入できたり、プチプラな洋服の質が上がってきたりと、いろんな価値観やカテゴリー分けがあるものだなあと感じている。
さっきも言ったが、何でも商売にしたがる人はいるので、ミニマリストだのプチプラだのは何か売りたいものがあるから言葉を考えてカテゴリーを作り、あたかも流行っている・定着しているもののように見せているに過ぎない。
流行っているものが自分にとってベストなものとは限らないので、思考停止して適当にモノを選ぶのではなく、見合った価値があるかどうかをきちんと見極めたい。


おうち時間だって、せざるを得ないからみんなこもっているだけで、しなくてもいいのならやらない。
東日本大震災の後もそうだったが、「コロナ以降、家で過ごす時間を大切にする人が増えるようになりました」という論調のコラムや記事が増えそうな気がする。
そういう風潮になるのはいいことだが、それにかこつけて何かを売ろうとしたり流行らせようとしたりする流れになるのは気持ちが悪い。