公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

あの日の全てが空しいものだと

眼鏡屋と服屋からのを除かずとも、年賀状の数が稲中卓球部の部員数より少なかった。


年始の挨拶をメールやSNSで済ませる人が増えており、年賀状の売上が年々落ちていると聞くが、数少ない友人から年賀状が届くのは嬉しいことだ。


数年前に結婚した女友達から今年は年賀状がきており、無事に第一子を出産したとの報告だった。


挨拶文と子供の写真がプリントされており、端のほうには手書きでメッセージまで入れてくれていた。


こういうちょっとした手書きの文章が嬉しかったりする。


ぼくはその女友達とは割とフランクに接していて、挨拶代わりに今日の下着の色を聞いたり、卑猥な発言を浴びせたりしていた。


そいつは男女問わず友人の多い愉快なやつで、ぼくのしょうもない下ネタをきっちり打ち返してくるような素敵なバッターだった。


今回の年賀状のメッセージにもちょっとした下ネタを書いてくれていたのだが、それを見た瞬間なんとなく、
「ああ、気を遣われてんな」
と思ってしまった。


結婚をし家庭を持ち子供が生まれ母にまで上り詰めた今、学生気分で下半身周りの話をしている場合ではないだろう。


一方のぼくは大した人生経験もしておらず、幼稚で不親切な人間性はそのままに年齢だけを重ねている。


だからといって現状どうしようとも思っていないのだが、友人もぼくのパーソナリティは知ってくれているので、幼いぼくに合わせて学生ノリを押し入れの奥から引っ張り出して披露してみたのだろう。


当時は問題なく着こなせていた学生気分も、今となっては丈が短かったりちょっと黄ばんでたりして見るに堪えないかもしれない。


にも関わらず学生ノリを発揮してくれた彼女の心意気に、返事を出す予定の寒中見舞いで触れるべきかどうかちょっと悩んでいる。


それともぼくの考えすぎで、学生の頃の関係性そのままに接することのできる友人として見てくれているのだろうか。


今は妻として、母としての顔がメインだけど、たまに学生時代の顔に戻りたくなったのだろうか。


人を分析したところで答えなんて出ないので、何事も自分のいいように受け取るのがベストだ。


ぼくは頑迷な老舗のようなもので、新しいことを取り入れることもせず時代に取り残されていつかは忘れられていくかもしれないが、楽しかった頃の空気はそのまま保っているので、昔を懐かしみたくなったら立ち寄ってみてはどうでしょう。


ちなみに友人が年賀状に書いてくれた下ネタの内容を紹介するのは、彼女がすべってるみたいで申し訳ないのでやめておく。