公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

スマホ弁慶

電車で通勤しており、基本的に立っているので座ってスマホをいじっている人の画面が見えることがよくある。


以前、電車内でマッチングアプリをしている女性のことを記事にしたが、今まではスマホ画面を凝視するのも失礼だと思いチラ見程度にしていた。


しかし、先日目に入ったディスプレイは刺激的な内容で、何のつもりでこんな文章を打ち込んでいるのか不思議で仕方がなかったため、完全に釘付けになってしまった。


眼鏡をかけたどこにでもいるサラリーマンだったのだが、スマホテキストエディタに何やら熱心に文字をタップしていた。


何の気なしにちらっと見たのだが、どうやら気に食わない誰かを罵倒する内容のようだった。


『お前みたいに仕事のできないやつは初めて』『舐めてんのか』というような荒々しい言葉が躍動していた。


ぼくが一番鮮烈に感じたのは、『お前の顔面を殴りたい。そしたらお前は鼻血が出るだろうな。』という一文だった。
(不安定な文章だが、本当にこんな感じだった。)


暴力はよくないのだが、それよりも鼻血が出るかどうかは分からんだろというのが第一印象だった。


それに、鼻血が出るだろうことをなぜ強調して書いているのかも疑問だった。


相手は血を見るのが怖い人で、文章で恐怖を呼び起こしたかったのだろうか。


何より、内容から非常に精神がおぼつかない印象を受け、どういう意図があってこの文章を綴っているのか不思議でしょうがなかった。


ぼくも嫌いな人や不幸になってほしいと思っている相手はいるが、わざわざ文字に起こして憎悪を再確認したりはしないし、好ましくない人間のことで頭をいっぱいにしたくないので可能な限り意識から排除しようとする。


彼はスマホから目を逸らすことなく、熱心にお気持ちを表明していたので、余程腹に据えかねていたのだろう。


あの文章はその相手にメールなりメッセージアプリなりで送るつもりだったのか、あまりにも腹が立ったから文字にして溜飲を下げていたのか、それとも完全なるフィクションでネット小説でも書いていたのかは分からない。


電車の中はスマホを操作している人がほとんどだが、眼球と乳と尻がやたらとデカい女の子が登場するスマホゲームを堂々とやっている人なんかは恥ずかしくないのかなと失礼ながら思ってしまう。


ひょっとしたら今回見かけたサラリーマンは、他人のスマホを覗き込む人間に向けて警鐘を発していたのかもしれない。


ということは鼻血が出るのはぼくだということになる。