公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

やんごとなき人たち

おっさんが公共の場で横柄な態度を取るのは、年功序列の会社で勤め上げたためそれなりの立場にいたことが原因だと言われる。
会社での上下関係を外にも持ち越してしまい、社外でも自分は敬われるべきだと勘違いしてしまうからだという。
御大層な肩書は社内でしか通用しないものであり、会社を一歩出ればその他大勢の一市民でしかないのだ。
どうして会社にいた時と同じように扱われてしかるべきだと思うのか不思議でしょうがないが、それが彼らの常識なのだろう。
その界隈では著名であったり敬われていたりする人であっても、一歩外に出れば自分の威光も逸話も全く通じないことはある。


最近、いわゆるインフルエンサーと言われるような人たちと縁がある。
いくらSNSのフォロワーが多かろうがぼくにとっては他の人と同じなので、そうですかくらいの感じだ。
ファンなんだけどミーハーだと思われないようにあえて淡白な反応しようとかではなく、そもそもSNSをやっていないので本当に知らないのだ。


ぼくがインフルエンサーだと勝手に思っている人がいるのだが、その人にはちゃんとした実績があってその上で影響力があるので、インフルエンサーとはそういうものなのだと思っていた。
(当人は自分のことをインフルエンサーだと名乗ったことはない)
拡散力や影響力を考えると仕方ないのかもしれないが、フォロワー数が多いことが正義みたいな考えが好きではないのだ。
情報を発信し、ブランディングを重ね、SNSのフォロワーを地道に増やし、今の地位を築いたというのも言ってみれば実績なのかもしれない。
魅力的な情報を発信していたり何らかの突出した点があるからすごいのであって、フォロワーが多いからすごいというのはどうにも理解ができないのだ。
本人が優れているからフォロワーが多いのだという意見もあるだろうが、本人の言動や人間性が心の琴線に触れない限りぼくにとっては意味がない。


そもそも、インフルエンサーは肩書を『インフルエンサー』としか紹介されんから、具体的に何をやってんのか分からん。
SNSのフォロワーが多い人?企業案件で食ってる人?人間離れした顔面加工写真を上げてる人?
何か実績がある人のおまけの肩書としてインフルエンサーがあると思っているので、インフルエンサー単体で名乗られると「なんのひと?」ってなってしまう。
なぜこの人はインフルエンサーなのか、具体的にどういう特長があるのか、そのへんからまず明らかにしてほしい。
すごいかどうかはそれから決めるので。
なので、どこぞの馬の骨とも知らない素人インフルエンサーは、「おしゃれっぽいライフスタイルを送っていて情報の拡散力がある人」「バズり狙いの適当な企業から金貰って適当なことを呟く人」くらいの認識しかない。


hanako.tokyo

先日、きゃりーぱみゅぱみゅインフルエンサーについて語っているコラムを発見した。
この人の書いた文章は初めて読んだのだが、ワードチョイスが軽妙で読ませる内容を書く人である。

「私はこのブランドさんからもらえる立場なんだよね」というライバルインフルエンサーたちへのマウントなんだと思います。

インフルエンサーの中にも階級があるようで、フォロワーが多いこと以外にもどんなブランドから何をもらったのかが戦闘力を測る指標になるのだろう。
自営業をする人は、会社に縛られずに自分の好きなことをしてお金を稼いで生活していきたいはずだ。
ところが自由だと思っていた世界でも暗黙のルールやめんどくさいしがらみがあるのはしんどい。


例えば数十万のバッグをPR用に贈ったとして、その金額はインフルエンサーに拡散を依頼することで回収できるのだろうか?
きゃりー氏も言っているが、SNSは誰に向けたメッセージなのかを理解する必要がある。
ただでもらったものは多少の粗があっても気にならないので、こきおろすよりは褒めといてまた企業案件を獲得できるように繋げる人もいるだろうし。
お金をもらって商品のPRを依頼されている場合もあるだろうし。
今は自分と好みや価値観が合っている人を発見しやすいので、その人の発信する情報を信用するようになっている。
あるある大辞典で紹介されてたから納豆やバナナが売り切れたときみたいに、それがインフルエンサーのお墨付きに変わっていっているだけのことだ。


同業同士のマウントの話もそうだが、インフルエンサーも決して楽な仕事ではないらしい。
結局、他人の提供しているプラットフォームで商売をしているので、それがなくなってしまえば活動の場を失ってしまう。
ロシアのウクライナ侵攻に伴ってロシア国内ではインスタの接続が遮断されているらしいのだが、ロシアのインフルエンサーがそれは困ると訴えていた。
youtuberなんかもそうだけど、SNSである程度影響力のある人が商売に乗り出すのはそういうわけもあるのだろう。
インフルエンサーで終わるつもりはなく、どちらかと言えば足がかり的に考えているはずだ。
昔は実績を積んで名前を売るというのが成り上がる手段だったが、今はとりあえず名前を売っといて影響力を確保してから本当の目標に向かうみたいな。


コラムの中できゃりー氏が「私はインフルエンサーではないので」と言っているが、間違いなく拡散力と影響力のあるだろう彼女がインフルエンサーでなければ誰がそうだと言うのだろうか。
かなり余裕があってカッコいい発言だと思う。
ぼくみたいなネットの片隅でブログを書いている人間がインフルエンサーに物申しても、当人たちは鼻くそくらいにしか思っていないだろう。
ところがその人らも、きゃりー氏のような殿上人からすれば一撃で始末できるような存在なのだ。