今までは一般人が世間から注目されようと思ったら、マスコミに取り上げられるレベルの事柄を達成する必要があった。
スポーツで優秀な成績を残すとか、学術的に意義のある発見をするとか、凶悪な犯罪を犯すとか、事の善悪は別にして才能のない凡人が大衆に認識されるにはそれなりの苦労が伴っていた。
一人が一台情報端末を持ち、SNSが普及した現代では、天才でも凡人でもアホでも簡単に承認欲求を満たすことができる。
俗に言う"バズる"というやつだ。
キャッチーでセンセーショナルでアバンギャルドかつ話題になりやすそうなことを呟くことで、知ってる人からも知らない人からも反応があるのは脳汁が出まくる得も言われぬ快感なのだと思う。
前回チラッと書いて、冷静になって考えてみたらイラっとしてきた。
最近話題になってる【ポテトサラダ論争】って、そもそも発端となったツイートあれ嘘だよね。
流行語大賞にもなった、【保育園落ちた日本死ね】と同じで、特定の性別や年代の人を叩きたいがために生まれた創作としか思えない。
ぼくはポテサラが簡単だとは思っていないので、主婦が総菜のポテサラを買うことを咎める見知らぬおっさんが"もしも"いたとするなら、非常に愚かなことだと思う。
"もしも"いたらである。
嘘だと思う根拠？そんなものはない。
また嘆かわしいことにこのツイートは"バズって"しまい、マスコミにも取り上げられ、ネットをしない層も知ることになる。
どこかのテレビ局が、ご丁寧にポテサラおじさんと近い年齢の男性にインタビューをし、「ポテトサラダなんて簡単だろ」と言っているおっさんの発言を大々的に取り上げ、対立を煽っているのが心底バカらしい。
ここまで問題になってくると発言の真贋は重要ではなく、話題が完全に独り歩きしてしまっている。
【毎日の料理に苦労している主婦（主夫ではない） VS 妻の苦労を鑑みることのない夫】という構造が完成し、夫サイドの旗色が悪い時点で、思惑としては成功している。
嘘とはいえ発端となったツイートをした人はさぞかし気持ちよく、ポテサラの話題を見るたびに絶頂しているだろう。
そしてこれに加えて、最近は【冷凍餃子論争】なるものも登場している。
知らない人のために、別サイトから概要を引用した。
事の発端は、ある主婦のツイート。冷凍餃子を食卓に出したところ、子供は喜んでくれたが、夫からは「手抜きだよ。これは れ い と う っていうの」と指摘されたそうで「この人ポテサラじいさん予備軍みたいなんで埋めるか打ち上げて良いですか」と不満を述べた。
「この人ポテサラじいさん予備軍みたいなんで埋めるか打ち上げて良いですか」
このクサい言い回し、餃子に至っては便乗して旦那や男性全般を叩きたいだけである。
嘘だと思う根拠？ないよ。
問題提起をするのは結構なことだ。
主婦の家事育児を甘く見ている男性がいるのは事実だろうし、冷凍食品を使うことが手抜きと思い込み購入を躊躇している妻も、冷凍食品を使うなんて怠慢だと思っている夫もいるだろう。
料理のみならず、家事全般に手を抜く場面があったっていいし、それを咎める人間がいるのは優しくない。
そもそも、料理は家事の中でもアウトソーシングがしやすい分野なので、使えるものはガンガン使うべきだ。
気に食わないのは、問題提起のために特定の層を貶める方向で嘘をついていることだ。
明らかに間違った論理や過激な主張を叩かせたい対象に言わせて、炎上をさせるという手段が当たり前のように使われている。
冷凍餃子なんてまさにその典型だ。
燃え広がることで誰か得をする人間がいるからここまで拡散されているわけだが、それに気が付いている人は少ないように思う。
（ここで言う"得"とは具体的な"収入"を伴うことを指す）
穿った見方をするとポテサラ論争の発端となったツイートも、料理に関する意識を変えたいというよりは、男性全般を叩きたい意図のみで発信したとしか思えない。
これでポテサラ論争や冷凍餃子論争周りの用語が流行語大賞にでもノミネートされたら万々歳でしょうね。
ぼくの後輩がこのコロナ禍の中、無事に某大手食品会社に転職できたらしい。
たまたま会ったとき、今の会社がどれだけ恵まれているかを熱く語ってくれた。
また、冷凍食品をおいしくするためにどれだけの工夫があるのかも。
モノを買うということは、単に見た目が気に入ったとか味が好みとかだけでなく、企業の取り組みや販売の姿勢に共感している部分も少なからずある。
冷凍食品もお惣菜も手抜きのために作られているのではない。
一から作るより時間も手間も少なく、かつ誰もが喜んでくれる味を開発するために企業の皆さんはがんばっているのだ。
後輩が冷凍食品を作っている会社に転職したというのは本当だし、味の素の"ザ★チャーハン"がおいしいのも本当だ。
