公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

メシ食おうよ

食事中にやたらと喋ってくる人がいる。
茶店でお茶をするとき、居酒屋などで会話を楽しみながら食事をするとき、そんなときはワイワイ楽しくご飯をすればいい。
だが、ラーメン屋や定食屋などの食べることをメインにおいた店舗でも、お構いなしに話しかけてくる人はなんとかならんものか。
会話をするにしても注文してから食事が来るまでの間や、食べ終わって軽くゆっくりしている時間に喋ればいい。
ああいう人は、とにかくおしゃべりが好きで、食事中も会話をせずにはいられないのだと思っていた。
だが最近、どうもそうではないことに気づいた。


先日、お客さんであるAさんとお昼ご飯を食べに行った。
友人(雇い主)・ぼく・Aさんの3人だ。
事務所によく顔を出してくれるお客さんで、顔はいかついが人当たりのいい人である。
打ち合わせをしていたら正午になったので、ぼくと友人が好きなラーメン屋にみんなで行くことになった。


Aさんはよく喋る人なので、注文してから食事が来るまでの間もずっと話していた。
頼んだラーメンが来てぼくと友人は早速食べ始めたのだが、Aさんは箸をつけずにいつまでも会話を続けている。
やっとラーメンに箸が伸びたかと思えば、麺を持ち上げたまま再び喋り出したのである。
一秒単位で冷めてカピカピになっていくスープから引き揚げられた麺を見て、この人なりの食べ方のこだわりなのかと不思議だった。
そのときふと、ラーメン屋に向かっている途中のAさんとの会話を思い出した。


Aさん曰く、「自分はあまり食にこだわりがない」とのことである。
お腹が空いたら食べるという程度で、何なら一日三食摂らなくてもいいそうだ。
そういう人がいるのは認識しているし、今までに遭遇したこともある。
しかし、Aさんのように目の前にした食事を最善の状態で食べることに頓着しない人は初めてだ。
おそらくAさんは、マズくなければ食物のコンディションにもこだわりがないのだろう。
ラーメンであれば極端に冷めたり伸びたりしていなければ問題ないのだと思う。
"おしゃべりが好き"なのではなく"食事にこだわりがない"故に、食べ物のコンディションを無視して会話を続けられるのだ。
ぼくからしたら考えられない。


一日に食事のチャンスは三回しかないのだ。
こちらとしては、与えられた機会をフルに活かして食事をしたい。
必ずしもこだわりの食材を使用したものや、誰もが絶賛する美味しいものでなくてもいい。
ただ、食べ物は美味しい状態で残さず食べるのが、作ってくれた人に対する礼儀だと思う。
Aさんも別に食べ物を粗末にしようというつもりはないだろう。
でも、せっかくならベストな状態のご飯を味わったらいいのにと思うのだ。


どうでもいいけど、昔嫌いだった給食のメニューに【大根おろし】がある。
正確には【大根おろしなめこを和えたもの】だ。
時間が経つと水分が飛んでカピカピになる大根おろしとヌルヌルのなめこのハーモニーがとにかく気持ち悪く、なおかつ見た目も白と茶色で華がない。
さらに、給食で提供される唯一の飲み物である牛乳との相性も最悪なのだ。
栄養バランスを考えたメニューなのだろうが、ご飯のおかずにも副菜にも、なんなら酒のつまみにも不向きなメニューは誰が考案したのだろうか。
今でこそ大根おろしなめこも食べるが、小学生の給食メニューにこんな渋いものを出すなんで、地域の給食センターは何のつもりだったのだろう。
よく、好きだった給食のメニューで揚げパンやソフト麺が挙げられるが、そんなもの見たことも食べたこともない。
一応言っておくと、財政的に困窮していた自治体ではない。