公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

悪女になるなら月夜はおよしよ

【趣味:人間観察】のやつがしょうもないという事実は、
人類共通の認識として受け継いで行くべきである。


吉岡里帆がどんなCMに出ようと、ドラマで何の役を演じようと、
どんぎつねが一番かわいいという揺るぎない事実があるように、
人々の記憶から消し去ってはならないことは必ずある。


人間観察が趣味だと公言しているやつは、自分は冷静かつ俯瞰して物事を見られる
軍師的な存在で、皮肉屋で的を射たことを言える人間だと思っているフシがある。


今日、電車の中で見かけた女子大生もそのパターンだった。


ぼくの座席の後ろに二人組の女性が座っており、
就活の話をしていたので女子大生だと思われた。


そのうちの一人が電車が発車した後、離席してしばらく戻ってこなかったので、
たぶんうんこに行ったのだろう。


うんこの方が、会話の中で『大好きな人間観察』という文言を何度も繰り返していたので、
趣味が人間観察だと判断した。


真後ろだったので会話の内容が丸聞こえで、どうも就職活動中で、
次年度から4年生になるようだった。


ということはハタチそこそこだろうが、ついこないだまで精子だったような若造ができる
人間観察などたかが知れている。


というか人間観察者のほとんどが、あの人キモかったとか好みのタイプだったとか、
せいぜいその程度の情報しか読み取っていない。


人の振り見て我が振り直せ的な、この世を解脱のための修行の場として考えて、
周囲の様々な物事から学び取るスタンスでは決してない。


後から友達と話してネタにするために、言わば馬鹿にするための相手を見繕っているだけで、
観察というほど高尚なことは何もしていない。


そうこうしていたら降りる駅になったので、去り際に自称観察者である女子大生様の顔を拝んでみたのだが、
案の定向こうもぼくの方を見ていてバッチリ目が合った。


こうやって周りの顔色ばかり窺って、でもビビっているのを悟られたくないから、
観察しているという虚勢を張らないといけないんだろうなと哀れになった。


ばかうけみたいな肌質と輪郭をした子で、性格の悪さが顔に出ている典型だった。


君が誰かを観察しているように、君も誰かに観察されているのだ。


うんこに行ったことも、就活中なことも、でかい声で喋っていた家族構成も、
エントリーシートをネットから丸パクリしたことも、
こちらには筒抜けだった。


アホみたいに自分の情報を垂れ流して、気付かずに物事を斜めに見た気になっているとは、
とんだ詰めの甘さである。


彼女がSNSに変なこと書いて内定を取り消されませんように。