公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

下劣な品性

子供の頃、バラエティー番組を見ていると、祖父に「こんなもん見てると馬鹿になる」とよく言われたものだった。


とは言えうちは特に厳しい家庭ということもなかったので、基本的にのびのび育った結果、家系がぼくで末代になるのはとても申し訳ないと思う。


最近のテレビはつまらないという意見を聞くが、つまらんのは視聴者がしょうもないことに難癖をつけまくるからで、作ってる人は用意できる材料で一生懸命やっているはずだ。


一方、面白くないテレビがあるのも確かで、外国人にやたらと日本を称賛させたり、最近の若い人がいかに常識を知らんアホかを触れ回ったりするような番組を面白いと思って見ている層の神経を疑う。


以前見た番組で、メキシコの寿司屋に日本人寿司職人が客として潜入し、店のありえないことに突っ込んでいこうぜみたいな内容があった。


辛い物が好きなメキシコ人向けにチリソースをかけた寿司みたいのがおどろおどろしい音楽とテロップで紹介されており、とにかく汚いもののように扱っていたのを見ていて気分が悪くなった。


日本にあるメキシコ料理だって日本人向けに辛さが抑えられているかもしれないのに、事情も考慮せずに他国の食文化を冒涜して何が面白いのか。


魚の扱い方とか包丁さばきとか、そういう実用的なことでも教えればいいけど、そんな地味な絵面は面白くないからインパクトのあるものをこき下ろしていこうということだろう。


メキシコの寿司屋が日本の寿司を馬鹿にしているわけでもないし、寿司の起源を主張しているわけでもなく、美味しいものを多くの人に食べてもらいたいと言う気持ちは同じはずなのにそんな心意気には全く触れずに、未開の民族に文明を啓蒙してやったくらいの感じで済ませていたことに腹が立った。


日本人の美徳である謙虚さはどこへいってしまったのか。


若者を馬鹿にするような番組も同様に嫌いなのだが、今の年寄りが若かった頃も、当時のジジイたちに最近の若者はだらしがないだの常識がないだの言われてきて悔しい思いをしてきたはずだ。


自分たちがジジイになって、昔やられて嫌だったことを若者にしてたら、自分たちが腹を立てた年寄りと同じになってしまうのに。


仮に今の年寄りは若者の間で流行っていることを知らないなんてダサいという番組でも作ろうものなら、時間とプライドだけは有り余っている老人からの苦情がものすごいだろう。


弱い者たちがさらに弱いものを叩いたところでブルースは加速しないので、憎しみの連鎖はさっさと絶つべき。


そうやって若者を馬鹿にしといて、年寄りを敬えだの大切にしろだの言われても筋が通らない。


みんな年を取ったら若いやつの世話になるのに、自分から邪険に扱われるような行いをしてどうするのか。


寿司屋にしても若者叩きにしても、自分がやられて嫌なことは人にしてはいけないというのは人間関係を円滑に進めるためには基本的なことだ。


祖父が言っていた、見ていたら馬鹿になるテレビとはまさにこういうもののことを言う。