公共の秘密基地

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名前のない怪物

「人間の本質が見たければ、ちょっとした権力を持たせてみることだ」と聞いたことがある。
小物ほど、与えられた権力を自分の力だと感じてイキってしまうそうだ。
自分を満たしてくれたり、コンプレックスを解消させてくれたりする力を使いこなすのは難しい。
特に、権力に若さゆえの無根拠な万能感が合わさると更に厄介になる。


今、Twitterでとある会社の人事担当者が軽く話題になっている。

togetter.com

要約すると、「給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくない。自分は会社の顔である人事だから、給与・待遇で会社を選ぶ人と働きたいと思わない」というものだ。
つまりは待遇が悪くても文句言わず働いてくれるやつがほしいということで、そんなことを素直に言ってしまえる裏表のない素敵な人事の方である。
せめて「企業理念に共感してくれる人と働きたい」くらいにしておけばいいのに、根本的に頭が弱いんだと思う。
そもそも「待遇にこだわりがない」ってことは、自分の仕事がどう評価されようが身を粉にして働けるということである。
そんな狂信者みたいなやつとは一緒に働きたくない。
日本の低成長を象徴するような考え方というか、こんな思考が蔓延してたらブラック企業がなくなるわけないわなと思う。
また、人事を「会社の顔」と考えているのも残念だ。
会社の顔なら慎重に言葉を選んで発言すべきだと思うのだが、どうも代表者ヅラしたいだけだったようだ。
「就活生が最初に接する企業側の人間」とでも言っておけばいいのに、権力を持った人間の小物っぷりが露わになっている。
ベンチャー企業のようだが、ベンチャーの採用担当ってちょくちょく炎上している気がする。
どうも彼ら彼女らは定期的にイキってしまう傾向にあるようだ。


東日本大震災があった年、トンボ鉛筆の人事担当がエントリー者向けのメールで、被災者への配慮を欠いた傲慢かついけすかない発言をして炎上したことがある。
その後、担当者の上司が発表したお詫び文では「弊社担当者の立場上の驕り高ぶりが現れた言葉遣い」と強く叱責していた。
分不相応な権力に狂った人間の様を象徴しており、就活生の生殺与奪を握ったと勘違いし、神にでもなった気でいたのだろう。
きちんと内省のできる人物を人事には登用すべきだ。
大体、ベンチャーの人事って広報も兼ねていることがあるから、顔の整った人を登用することが多い。(炎上している人事の容姿がどうかは別にして)
堂々と顔写真を晒せるあたり、二重三重に勘違いしたんだと思う。


叩かれた人事は「あくまでも自分の意見であって会社とは関係ない」とビッチなことを言っているが、会社の看板を盾にしておいて個人の意見では済まされないだろう。
少なくともこいつがその会社に勤めているのは事実なのだから、こんな勘違い女が人事をやっている会社でなど働きたくない。
よくもまあ顔と実名と所属を晒して間抜けことが言えるものだ。
これで人を集められるのならいいですが、御社にはどんな魅力があるのですか?
まあ、会社にどんな人間がいてどんな人材を求めているかを足りない言葉で開示してくれているのだから、ある意味助かるとも言える。
毒のある生き物が派手な色をしているようなもので、近寄らない・食べないようにすればいいだけなのだから。


勘違いしてしまった人間も元々は権力を振るう側におらず、傲慢な権力者を軽蔑し、「自分はああなるまい」と思っていたことだろう。
このイキり人事がどんな就活をしていたかは知らないが、活動を続ける中で理不尽な思いをしたことや、そんな体験を耳にしたことだってあったはずだ。
人のふり見て我がふり直せとはいかなかったようで、嫌っていたであろう相手に似てしまうのは皮肉なものである。
昔のおとぎ話かなんかで、怪物と戦い続けていた人が怪物を倒したとき、自分も怪物になっていたみたいな物語を読んだことがある。
自己顕示欲と承認欲求と権力の怪物になってしまった彼女は、周囲のアドバイスは人事(ひとごと)だと一蹴してこれからも会社の顔としてがんばってほしい。