公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

12月に読んだ本

今回は2022年最後の読書記録となる。
基本的にはネタバレ注意だが、最後に紹介する作品についてはとにかくおススメなので詳細は伏せさせていただく。


↓先月分↓
mezashiquick.hatenablog.jp


↓今回読んだもの↓

王様ランキング (15)

二部に入ってから勢いが落ちた気がする。
ボッジが何を考えてるのかいまいち分からんのはいいとして、ここ最近の展開では少々不気味さも覚えるようになってきた。
もうちょい読んでみてから判断。

プラネテス (1-4)

人類が宇宙に進出するようになった時代に、地球の周りを漂う宇宙ゴミスペースデブリ)を回収する人たちの話。
アニメにもなっているので知っている人も多いと思う。
もしもこの作品のように宇宙時代が到来したとき、人類はどんなことで悩んだり争ったりするのだろうか。
数多くの創作作品で描かれてきたことだけど、あくまでも今の時代の人によって描かれたものなので想像の範疇を出ない。
シャアのように、宇宙に出た人類の革新に期待して過激な世直しをするやつが出ないとも限らない。
この作品でも、文明が進歩したにも関わらず旧時代の人類と同じように生きづらさを抱えた人たちが登場する。
「こだわり」っていい言葉のように思えるけど意外と楽だったりするのだ。
だってそれだけ考えていればいいので、ある種の思考停止みたいなものだから。
こだわりを追求するあまり周囲からは心配される人もいる一方で、あえてしんどい状態にいる人もいる。
なぜなら他のことは考えなくていいから省エネだし、他を多少ないがしろにしてもがんばってる感が出るからである。
それしか知らないという理由でのこだわりと、いろいろ知ってる上でのこだわりはまた違うよなあという感じ。
巻数も少ないのでぜひ読んでみてほしい。

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子

ダンジョン飯が話題の作者さんによる短編集。
短編集ってほとんどもってなくって、うすた先生と藤本タツキ先生のしかない。
基本的にはファンタジーだがどの話も全く異なった世界観でありながらうまいことまとまっており、作者さんの構成力に感服した。
童話を漫画で読んでいるような、未見の話なんだけどどこか懐かしくて、残酷だったり優しかったりコミカルだったりする。
作者さんをもうちょい早く知ってたらダンジョン飯も読んでたのになあと思う。
(10巻以上出ているので手を出すのがちょっとためらわれる)

暗殺の年輪

最近読んでなかったので久しぶりに読んだ藤沢周平作品。
表題作を含めて5篇の物語から成る短編集。
藤沢周平作品には下級武士を主人公にしたものが多く、表題作はその原型とも言える。
どの話にも、強かだったり明るかったり未練たらたらだったり、印象的な描かれ方をする女性が登場していた。
下級武士という武士でありながら貧しい暮らしをしていた人たちと、個性の強い女性が結びついたとき、どうにも後ろ暗くて情念が満ち満ちた物語になるので非常に好みだった。
特に印象的だったのは表題作の『暗殺の年輪』だ。
テーマとしてはいろいろあっただろうけど、「母親の女の部分に子供はどう向き合うか」がひとつの主題としてあったと思う。
これはキツイなあと思って読んでいたが、思ったより描写がねっとりしていたのでなかなかに抉られた。
親のセックスなんか見ずに済むのなら見たくないし、貞淑な女性が求められていた時代ならなおさらだろう。
最近読んだ作品だと三島由紀夫の『午後の曳航』も似たようなテーマで書かれていた。
午後の曳航では作者の性的志向もあってか母親の性よりも相手の男性にフォーカスした内容になっており、いろんな書き方や物語があるもんだなあと感心した。

プロジェクト・ヘイル・メアリー (上・下)

2022年最後に読んだ本。
あとがきにもあったけど、事前情報なしに読んでほしい作品なのでネタバレなしで語っていく。
海外の宇宙SF作品で、敷居が高そうに思えるが読んでみるとそんなことはない。
科学考証はかなりしっかりしているように見受けられ、物理学や生物学の専門的な内容にも触れられているものの、知的さとユーモアのバランスが絶妙で夢中で読み進めてしまった。
主人公が自分の置かれた状況を分析する際に科学力を生かした推理をするのだが、何をやってるかはよく分からんかったけれどもただただインテリジェンスの海に浸って楽しんでいた。
(専門的な知識がなくても問題なく読めるよという意味)
他者に対する思いやりや喪失と復活、友情やハラハラ要素など、好みの展開がたくさん詰まっている作品である。
ハードカバーで上下巻というなかなかのボリュームだけど、ぜひ読んでみてほしい。
SFって漫画でも小説でもあまり読まないので、今回はプラネテスしかり良いSF作品に触れることができた。
アメリカは早くメートル法に統一したほうがいいと思う。