公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

投げつける母性

今年の夏休みは8/11-8/21までとたっぷりあったが、暑かったり天気が悪かったりコロナが猛威を振るっていたりした。
そのため、自宅で本を読んだりアニメを見るなどして過ごしていた。
全力でだらけていたとき、とある印象深い出来事があったので書いておく。
「お前らもやっと気が付いたか」と思わざるを得ないことだ。


事の発端は、とあるVtuberの活動休止騒動だ。

www.anycolor.co.jp

2022年春頃より、SNS等においてアクシア・クローネに対する誹謗中傷、悪意に基づく虚偽の情報の流布、アクシア・クローネに関わった他の弊社所属ライバーに対する誹謗中傷や危害予告(以下「誹謗中傷行為等」)がなされ、これが悪化・継続しておりました。
そして2022年8月、アクシア・クローネ以外の多くの弊社所属ライバーの配信においても、アクシア・クローネの名前が含まれたスパムコメントが大量に投稿され、弊社の配信事業に対する著しい業務妨害行為が行われるようになりました。

活動休止の原因はこういうことらしい。
被害は本人だけでなく、同じ事務所のライバーに対しても及んでいたようだ。
にじさんじを運営するANYCOLORは以前にも所属ライバーに対する誹謗中傷には断固とした対応をとると声明を発表しており、この件の対応中に発表したコメントなのかとも思った。
これだけだと具体的にどういった誹謗中傷行為が為されたのか分からないが、本人は活動休止に際して動画を投稿しており、それによって気持ちの悪い内容を知ることとなった。


kai-you.net

記事から一部抜粋する。

自身のゲーム配信で何をしても「かわいい」というコメントが付くことや、コラボ先の相手にファンが「うちのアクシアをお願いします」と言ったり、相手の配信に陰湿なコメントを残されたこと対して、「母親面しないでくれ」とコメントした。
そういった一部のファンの行動に関して、アクシア・クローネさんが配信裏でコラボ先に謝罪をしていたこと、またたびたび「やめてほしい」と呼び掛けていたにも関わらず、「アクシアは反抗期」などと言われ、自分の行動を束縛しようとするようなコメントがあったと明かした。

これを見るに、いわゆる「ガチ恋」勢が引き起こした事態と言えるだろう。
かなり気持ちが悪い。
解説しておくと、Vtuberに限らず配信の世界において話題に上がっていない他配信者についてコメントすることは「(伝書)鳩」と呼ばれてタブーとされている。
つまり、ファンが「うちのアクシアをお願いします」とコラボ相手にコメントをすることはよろしくないわけだ。(コラボ配信中のコメントならいいかもしれないが)
というかそもそもこのコメント自体本人が嫌がっているのでマナー以前の問題だ。
また、Vtuberファンの中には推しが配信やSNSで異性と絡むことを良しとしない人がいる。(実際のアイドルとかにもいると思うけれど)
ちょっと調べたところ、同じ事務所の女性ライバーが彼との関係を匂わせるようなことをしていて、誹謗中傷の対象になっていたようだ。
もちろん匂わせはガチ恋勢の被害妄想によるでっちあげだろうが、どんな陰湿で悪質なコメントがされたのかは想像に難くないだろう。


併せてアクシア氏の活動休止発表の動画も見たのだが、相当腹に据えかねた怒りと拒絶っぷりだった。
喋ることは決めていたのだと思うが淀みなく怒りを表明しており、ここに至るまで何度も言葉で説明して、きちんとお願いしてきたであろう彼の苦労を察してしまう。
強い言葉を使わないと分からない層がいて、強い言葉を使っても分からない層や認めない層がいて、分からない人たちは本当に哀れだと思う。
アクシア氏の他の動画は見たことがないのだが、彼は特にガチ恋を量産するような配信はしていなかったと聞いた。
それなのに本人の意に反するコメントが集中し、やめてほしいと言っても聞く耳を持たれず、あまつさえ配信内容に対する指図や他のライバーに対する誹謗中傷など、ストレスは半端なかったことだろう。
動画を見られない人のために有志の人が文字起こしをしてくれたものもあるので、よかったら見てみてほしい。

anond.hatelabo.jp


ぼくがこの件で感じたのは、「女性から男性へのセクハラ」という点だ。
世の中には男性が女性に言えば問題になるようなことでも、逆であれば平気でまかり通っているケースがある。
本件についてはまさにセクハラオヤジのマインドで、「これくらい問題ないじゃないか」「これがダメなら何も言えなくなる」というのを地でいっている。
アクシア氏の動画を見る限り、「かわいい」と言われることや配信内容についての指示は本人が望んだことではなく、「母親ヅラしないでくれ」とやめるようにもお願いしている。
にも関わらず「反抗期」だの「私がいないとダメ」だの、話が通じなさ過ぎて本人もどうしようもなかったことだろう。
女性からすればかわいいは称賛の言葉なのかもしれないが、それを馬鹿にされたと受け取る男性もいる。
例えばゲーム実況をしていてゲーム内でミスをしたとして、それに対してかわいいとコメントがついたらどう感じるだろうかという話だ。


「褒め言葉だと思って言ったことがセクハラだった」という配慮不足は男性から女性のコミュニケーションにおいて昔から言われていることだが、逆については言及されることが少ない。
それは被害がないということではなく、被害が見えづらかっただけのことだ。
女性からへのセクハラ言語化することで見えるようにし、男女の区別なくどんどん批判されてほしいし、女性も意識を変えてほしい。
その点、「逆セクハラ」という言葉を聞かなくなったのは良いことだと思う。
セクハラは男性から女性にのみ向けられるものという前提で出来上がった言葉だからだ。
見た目に関しては男性より女性のほうが心無い言葉を投げかけられることが多いと思うが、女性からの加害が見過ごされていい理由にはならない。
とにかく女性は自分の加害性と気持ち悪さに無頓着すぎる。
今回で言えば、性欲の隠れ蓑として保護者目線で接しているのが気色悪い。
母親だからこれくらいのことは言っていいだろうみたいなスタンスでいて、その実は自分の性欲を満たしたいのが透けて見える。
小学生くらいのジュニアアイドルを応援しているおっさんに置き換えると分かりやすいだろう。
ウッソがルペ・シノさんに言っていた「お母さんをやりたいなら、自分で子供を産んでそれでやってくださいよ!」がこんなにマッチするシチュエーションもそうそうない。


アクシア氏は動画の中で『リア恋も腐女子も俺は好きじゃないけど大勢の人が見るであろうところじゃなく、自分の中だけで楽しむんだったら俺は別にいいと思ってる』と述べている。
これはまったくその通りで、「ナマモノ・半ナマ」界隈で二次創作活動を続けている人なんかはわきまえていると思う。
「ナマモノ・半ナマ」とは、二次創作におけるひとつのジャンルのことだ。
実際の人物を扱ったものが「ナマモノ」、実際の人物が演じているもの(ドラマや舞台など)が「半ナマ」となる。
Vtuberは微妙なところだけど、本人に人格があるので半ナマでいいのではないかと思う。
それはさておき、ナマモノも半ナマもマナーとしては「隠れてやる」というのがある。
例えば、芸能人AさんとBさんのファンがふたりのBL同人誌を制作してそのファンや本人に披露したとすれば、どういう反応が来るだろうか。
勝手に嗜好を歪められたり、理想を押し付けたりされれば本人はいい気分でないだろうし、ファンからしても創作であっても推しの見たくない姿もある。
好意的な目で見られることが少ないであろうことが分かっているから、ナマモノ界隈は見えないところでやるべきなのだ。
配信者はその環境上リスナーとの距離が近いため、わきまえることができない人が増えてしまうのだと思う。


ファン活動って、対象に認知されたいではなく楽しいからで活動すべきだ。
認知されることを目的にすると自意識が出すぎてしまうと言うか、観客が舞台に上がる的な暴挙に出かねないと思う。
お金を払っているからという理由で高圧的になってしまうみたいなこともあるし。
だけど、握手券を買うとCDが付いてくるAKB商法しかり、スパチャを投げられる配信者界隈しかり、いかに推しに認知されて承認欲求を高めるかがファン活動のモチベーションになっている人が多いようだ。
大変失礼ながら配信者ってチョロい仕事だなあと思っていた時期もあるんだけど、楽しくないと続かないんだろうなあと頷くことしきりだ。