公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

7月に読んだ本

7月は追いかけていた漫画が2作も終わってしまった。
何か新しい作品を追いかけたいなと思うと同時に、これを書いている8月は漫画の新刊が4冊も出るので楽しみだ。


↓先月分↓
mezashiquick.hatenablog.jp


↓今回読んだもの↓

さよなら絵梨(読切)

ルックバックの評価が高すぎるためこちらの作品は公開当時賛否がハッキリ分かれたと思うが、個人的にはこちらのほうが好みだ。
購入するつもりはなかったんだけど、発売日にジャンプ+で公開されたタツキ先生の新作読み切りを見て買わずにはいられなかった。
どこまでが映画でどこまでが現実とかそういうのはいいんだよ、面白いんだから。
チェンソーマン第二部が盛り上がっているところではあるが、そっちにしてもさよなら絵梨にしても、過度に神格化せずに「フツーに」読もうと思う。

ゴールデンカムイ 31(完結)

単行本の加筆エピソードを読んで思ったこと。
ゴールデンカムイの呪いに巻き込まれて死んでしまった人もいるけど、命を落とした人を含めてちょっとずつみんなの願いを金塊が叶えているのだ。
「愛するものはゴールデンカムイに殺される」と言った鶴見中尉、「黄金の神様は使う人によって良くも悪くもなる」と言った杉元。
鶴見中尉は主人公である杉元たちにとって敵側の人間だったかもしれないけど、立場が異なっていただけで国を憂う気持ちは本物であったということ。
まさに、「金塊も権利書も、それがなくては国防が務まらないということではいけない」だった。
彼の国に対する愛が本物であることを実感したし、野田サトル先生が鶴見中尉のことを大好きなのもよく分かった。

オッドタクシー 5(完結)

映画の範囲まで書いてくれるかと思ってたけど、アニメ同様の結末だったので先が気になる人は映画版を見よう。
最終巻はおまけとしてドブと矢野の過去編が収録されている。
過去編にハズレなしと誰かが言っていたが、二人の過去編も例に漏れず、欠けていたピースが埋まっていく内容で気持ちが良かった。
ネタバレになりかねんしあんまり感想が書けん。
漫画版はもちろん面白いけど、BGMとかラジオとか凝ってるし、ラップもあるし、やっぱりアニメから見てほしいなあ。

バジリスク甲賀忍法帖~ 1-5(完結)

デカい本棚を購入したので、前々から読みたかった漫画や手放してしまった漫画を買い集めている。
バジリスクは原作もアニメも見たのだが、所有はしていなかったのでこの機会に購入した。
この密度と満足感で5巻で収まっているのはすごい。
ざっくり言えば忍者同士の超常忍法バトルである。
原作となっている山田風太郎の小説は1959年に発表されたものだが、70年ちょい前の作品で異能力にここまでのバリエーションを持たすことができていたのだ。
今では能力バトルものに当たり前に登場する無効化系能力しかり、もっと変態的な能力しかり。
アニメのOP前のナレーションもカッコいいし、漫画は短い巻数でまとまっているし、どちらもお勧め。
原作小説も読んでみようと思っている。
桜花忍法帖については触れない方向で。

星屑ニーナ 1-4(完結)

表紙の左がロボットの「星屑」、右がヒロインの「ニーナ」
まず、ニーナを好きになれるか否かがこの作品を楽しめるポイントとなる。
登場人物がニーナに抱いている感情は各々あれこれあるが、出来事の全てに彼女が関わっており、行動の動機付けになったりコンプレックスになっていたりしている。
ちょっと話が大きくなり過ぎたあたりで「うーん」となったのだが、登場人物も読者もニーナに振り回される漫画なのだと思う。
話としては全然違うけど、「最終兵器彼女」を思い出した。
また、ニーナに限らず登場人物がみんなエネルギッシュで生き生きしていてよかった。
どの人物も道半ばで志を断念することなく、最期まできっちり生き切っているのが素敵。
疲れた時に読むと効く漫画かもしれない。かなりおススメ。

ラブノーマル白書

週刊文春で連載されているエッセイを文庫化したもので、タイトルは違えど書き出しはすべて「人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。」で始まるシリーズ。
リリー・フランキーさんやみうらじゅんさんのエッセイが好きなのだが、両者とも女性とのあれこれを書いたエッセイが多い。
女性との間にあった出来事を書くということはそれだけモテているということだが、自慢っぽかったり嫌味に感じたりしないのが不思議だった。
と思っていたら、巻末に収録されている週刊文春編集長との対談に答えが記されていた。

"笑い"に落とし込まないと気が済まないという弱さもある。モテた自慢話なんてちっとも面白くないんだから。

他にも、友達の話も自分の話として書いていることで、あえてエロの汚名を着ているというコメントもあった。
実は、みうらさんが女性について書いたエッセイを読むのは初めてで(今までは仏像や親孝行や生き方に関するものを読んでいた)、女性関係についてあまり知らないなあと思って軽く調べてみた。
すると、不倫(不倫相手は後にみうらさんの子供を出産)や離婚も経験してるとのことで、割とだらしない下半身をしていた。
対談の中でみうらさんは年を取っていくに当たって自分のエロとどう向き合うかということを話しており、勝手な解釈だけど「世間的に叩かれかねないことも笑いにする」のがみうらさんなりのエロとの向き合い方なのではないかと。
色即ぜねれいしょんのような小説も執筆しているけど、みうらさんは「事実は小説より奇なり」を体現しているのでエッセイの方が面白いことも多い。

方丈記

国語の授業で習ったかもしれない、『行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。』この冒頭で始まる、鎌倉時代の随筆作品。
自らが体験した災害や飢饉や遷都の経験を経て、財産も豪邸も官位も権力も永遠に続くものなどないことを悟った著者は京都の郊外に庵を建てて隠居生活を始める。
初めて全編通して読んでみて、意外とページ数は多くないことと、割と俗っぽいなと思った。
悟りを開眼して霞を食べるような仙人の如き生活をしているんだろうなというイメージがあったのだが、生活に迷いを感じさせる記述が多々見られた。
そもそも、暮らしに迷いがあったからこそ自分のことをエッセイにしたとも言える。
何より、好きなものを捨てきれなかった人間臭さが最高だった。
筆者は和歌と琵琶演奏が好きなのだが、隠居生活に際してもこのふたつは楽しんでいたようだ。
何をもってして「隠居」「隠棲」というかは分からないけれど、全てに執着しないことをそうなのだとすれば鴨長明は「本物」ではないのかもしれないし、本物に成り切れなかった証が方丈記かもしれない。
でも別にそれでいいと思う。
年を重ねても俗世と隔絶した生活をしていても、好きなものがあるって最高。