公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

不貞の呼吸 拾ノ型 托卵

とにかく日本人はギャップに弱いと言われる。
破天荒な生き方をしつつも後世に名を残した武将の武勇伝やヤンキーの更生物語とか、成し遂げたことと普段の生活の落差が大きければ大きいほど人々は絶頂して崇める。
アホだなあと思っているのだが、「図書館で司書をやっている巨乳」とか「地方の市役所で真面目に働いている巨乳」などには巨乳でありながら地味な暮らしをしているというギャップに興奮するので、ポイントはそれぞれ違えども誰しもギャップに惹かれてしまうのだろう。
というか海外ではギャップに魅力を感じる風潮はないのだろうか。
真面目に働いている巨乳に何とも思わないのだろうか。


前回と導入が被ってしまうけど、鬼滅の刃が流行ったとき、有象無象の週刊誌やwebメディアがどうして鬼滅が人々に支持されるのかを分析していた。
最近はシン・エヴァの公開に伴ってアクセス数稼ぎの考察記事が多くてうんざりしている。
鬼滅に関しては「主人公が優しい」「敵である鬼にも悲しい過去がある」みたいなことが判を押したようにどこでも言われていた。
中には「ジャンプ史上最も!」みたいな枕詞も付いていて、そういう誇大表現はぼくみたいに厄介な物申し人間を召喚してしまうからやめたほうがいいのにと思っている。
「ジャンプ読んでないのがバレバレ」「普段アニメを見ない一般人はこういう作品があるのを知らないんだろうなあ」みたいな無意味なマウントが入るので、あまり強い言葉は使わないほうがいい。
優しい主人公で敵にも悲しい過去があるんなら、同じジャンプ作品でも例えばダイの大冒険なんかが該当する。


鬼滅の刃に登場する鬼は人間を喰らう悪逆非道な存在でありながら、彼らにも人間だった過去がある。
弱い立場の人間だったり周りから虐げられたり強いコンプレックスを持ったりしていて基本的には不遇な人生を送っており、その弱みや心の隙に付け込まれて鬼となってしまうのだ。
問答無用で敵対する存在ではなくて悪に手を染めざるを得なかった理由と、その罪が優しい主人公によって救済される(そうでない鬼もいるが)という点に鬼滅がウケた背景があるらしい。
悪いヤツだけど悲しい過去があるというギャップに、自分の弱さや甘さと重ね合わせて共感する人もいるだろうし。
もっと言えば少年漫画を子供の読むものと決めつけていた層が、意外と大人も読むに堪えることを知ったギャップでハマっているのもあるだろう。


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だからこういうのを見ていると、失礼かもしれないが鬼滅を連想する。
「不倫をする女性にも悲しい過去が…」みたいな。
不倫をしている女性から寄せられた体験談は昔から数あれど、今は猫も杓子も「悲しい過去」だからブームに則って悲しい過去ありきの不倫をしているのかなと思ってしまう。
基本的にこういうのって、不倫は悪いことだと分かってはいるけどって前置きが入るものの、言い訳をして悲しい過去を披露して何だかんだで別れていない。
この記事の女性も本気で関係を終わらせたいと考えているんなら、ジムを退会するとか趣味の集まりにでも参加して気の合う相手を見つければいいのにそれをしていないということは、本心では罪悪感など覚えていないのだ。
仮に罪悪感があったとしても、罪の意識も快楽のスパイスなんだゾ☆くらいに思ってそうだ。


よく、「男性の不倫は性欲のみだが、女性の不倫は性欲だけでは測れない」みたいな言論で女性の不貞行為を正当化もしくは男性の不倫よりマシとしようとする論調がある。
某ドラマの影響からか「不倫妻」ではなく「昼顔妻」なんて言い方もするらしい。頭いかれてますわ。

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性欲だけではないということは見方を変えれば気持ちも入った上での心(と下半身)が繋がった不貞行為なので、より本気度が高く悪質だと思うんだけど自分で首を絞めていることに気が付かないんだろうか。
ギャップという点から言っても、貞淑そうな人妻がドスケベ不倫をしているという事実は一見興奮するかもしれないが、それはAVの世界だけで十分だ。
実際は貞淑に見えて家族のことを平気で裏切る人間だとか、後先を考えられないアホだとか、お股がゆるゆるのゆるふわ系人妻だとか、良いギャップを悪いギャップが上回ってしまう。


鬼滅の刃での鬼はどれだけ強くてどれだけ悲しい過去があっても、最終的に首を切られて倒されてしまう。
優しい主人公にすら絶対に許さないと激怒され、死ぬ間際まで自分は悪くないと思っている鬼もいた。
悲しい過去があったところで鬼のように誰かに危害を加えていい理由も、ドスケベ人妻のように不貞行為をしていい理由にもならない。
何より、鬼と不倫に共通するのは「日の下に出ることができない」という点だ。
鬼はどんなに強大な力を持っていても日光を浴びると身体が崩れて死んでしまうのだ。
同じように、不倫カップルは関係を堂々と白日の下に披露することができない。
両親や家族に顔向けできないことをしていると気が付いて止めるか、儚い関係だと悦に浸ってさらに加速していくかはそれぞれだ。
まあ別にこちらは他人の不倫を許すとか許さないとかの立場にないわけだ。
自分がやりたくないだけだし、パートナーにもしてほしくないし、何より不倫を正当化する馬鹿が嫌いなだけである。


正直ぼくは漫画の敵キャラに悲しい過去があるかどうかは作品を評価する決め手にならない。
人物にバックボーンがあったほうが展開に没入できたりキャラクターに共感できたりしていいのだが、あんまり感動を推されると見る気がなくなる。
ひと昔前に乱発された「彼氏もしくは彼女がなんやかんやあって死ぬ」みたいな恋愛映画を見ているみたいで冷める。
ドラゴンボールフリーザなんかは悲しい過去も何にもなくどこまで行ってもああいう人なんだけど、魅力のあるキャラクターだし。
だから不倫をする側もごちゃごちゃ理屈をこねてないで、「おっぱいと尻がデカかったから」「ちんこがいいポイントに当たるから」くらい性欲をぶちまければいいのだ。
どうせ怒られるんだから。