公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

お前なりのサビを聞かせろよ

以前にも書いたことがあるが、男性はみんな浮気をするものという論説は失礼だ。
今まで不誠実な男性としか縁がなかったとしたら、自分に男性を見る目がなかったり、所属しているコミュニティの倫理観が低く浮気をする男性が周囲に多いという環境だったりするだけだ。
パートナーに常に誠実である男性はいくらでもいる。
浮気や不倫を肯定する気はないが、責任を善良な男性にまでなすり付けられても困る。

bunshun.jp

最近話題の彼しかり、東出や渡部や伊勢谷やマッチしかりクズ男はどうにもモテるらしいが、だからと言って「女性は全員雑に扱われたがっている」と言われたらどう思うだろうか。
クズ男が特定の属性の女性からモテるからと言って、女性がみんなクズ好きなわけではない。


女性誌や、有象無象の女性向けウェブメディアで見かける気に食わない内容がある。
「女子がおうちデートで彼氏とシたいと思っていること☆」
「女子がお風呂で彼氏としたいイチャイチャ☆(ゝω・)」

みたいなやつだ。
「お?セックスか?」と思って中身を見ると、「二人でゆっくり映画が見たい」「疲れている彼氏にマッサージをしてあげたい」などの綺麗事が羅列されている。
「彼氏と"シたい"」というようにそこだけカタカナの見出しを付けているのに、肩透かしを喰らった気分だ。
文字だけで性を連想して期待した自分が馬鹿みたいじゃんか。
もういいからそういうの、素直にセックスって書けよ、セックス!


進化を止めると人間は衰えるので、ぼくは日進月歩で成長している。
とある有識者から「女性は毎日が前戯」と教えてもらったので、綺麗事にしか思えない行為も本番を盛り上げるための余興なのだと今のぼくには理解できる。
前戯の段階から既にプレイは始まっているのだ。
いくら性欲がとめどなく溢れているとは言え、セックスばかりして過ごすのも文化的でないし情緒がないと思っている人もいるだろう。
でも最終的にはやるんでしょ、セックス。
焼肉行くことになって、ビビンバやキムチやシャーベットだけ食べて帰らないでしょ。
途中で友達に会ったとして「今からキムチ食べに行く」とは言わないでしょ、「焼肉行く」って言うでしょ。
久しぶりに言ったわ、シャーベットって。
こっちはサビを聞きに来てるんであって、前奏で何を奏でるかを聞いてるんじゃないのよ。


そんなことを思っていたときに、この記事を見つけた。

ananweb.jp

ananだしどうせしょうもないこと書いてるんだろうなあくらいに思っていたが、初っ端から逸材を発見した。

「お泊まりの時は、ベッドタイムの前にお風呂へ入り、アンダーヘアを掴んで引っ張って、抜ける毛を事前に抜いておきます(笑)。無理やり減らしたいわけではなく、もうすぐ抜け落ちる毛をなくしておくことで、口でしてもらった時に毛が抜けてしまう事態を防ぎたいんです」(30歳・会社員)

(笑)でごまかしているが、おっさんが書いているんじゃないかと目を疑った。
むしろ、こんなことを笑いながら言うあたり本物の狂気の持ち主だなと戦慄した。
やってることは理にかなっているし、彼氏も彼氏で彼女に気持ちよくなってほしいという精神を忘れない素晴らしい人だと思う。
そんな彼氏の行動に甘えることなく、毛が彼の口に入らないようにケアをする彼女の心遣いも立派だ。
お互いに思いやりを持った素敵なカップルだと言える。
狂っているのは喜々としてインタビューで内容を話す心と、荒すぎるケアの内容だ。


「女性の下ネタってえぐい」と主張する一派はいつの時代にもいるが、えぐいと言うより汚いだけで面白さもないし、何より彼女たちは自分の身を切らない。
やれチンコがどうだの喘ぎ声がどうだのと男性の個人情報ばかりで、自分の性感帯や乳輪のサイズといった己の身体のことに関してはガールズトークであっても社外秘なのだ。
妊活に励んでいる女性同士はセックスの話をすることもあるらしいが、それは必要に迫られたからしている「学術的」なことあって、酒の席でのネタのような「娯楽」ではない。
とにかく誠実さがないし、みんなで円になって座り真ん中に見てくれのいいものを置いて、それを褒めているだけの無味無臭さを女性の下ネタには感じていた。
そんなところに突如乱入して、自分のハメ撮り映像を高画質で延々と見せつけるある種の暴力性を陰毛の彼女には感じた。
ちょっと違うかもしれないが、幽遊白書の樹が言っていた「キャベツ畑やコウノトリを信じている可愛い女の子に無修正のポルノを突き付ける時を想像するような下卑た快感」みたいだ。


加えて、口に含んだ焼酎を傷口に吹きかけて消毒するような豪快さもある。
彼氏のことを考えるのなら永久脱毛でもすればいいのに、荒武者のような粗雑さは遠い祖先の血がそうさせるのだろうか。
誤解してほしくないが、ぼくは陰毛の彼女について嫌悪感を抱いているわけではなく、むしろ褒めている。
ananのアンケートなんか毒にも薬にもならないことを適当に答えておけばいいのに、正直に自分の習慣を、しかも身体周りのセンシティブなことを答えているあたりに非常に好感が持てる。
陰毛を毟っていることをぜひ彼氏に隠し通したまま、幸せになってもらいたい。


「人それぞれのルーティーンがある」との文言で記事は締め括られているが、彼氏の家の風呂で陰毛を抜くことがルーティーンに含まれているなんてなんか職人みたいだ。
ただまあ、同じことをしているのはこの人だけではないだろう。
陰毛の彼女はあまりにも潔いために頭がおかしい感じになっているが、他人に言えない変な癖のひとつやふたつ誰にでもある。
風呂では確かに毛は抜けやすいし、草むしりみたいにやってみたい気持ちは分かる。
女性がみんなクズ男好きではないように、全ての女性が風呂場で陰毛を抜いているとは思わないことだ。