公共の秘密基地

好きなものも嫌いなものもたくさんある

哀しきモンスターたち

婚活相手への文句しか言っていないブログやSNSを見ると、非常に哀れになってしまう。
この人らは、愚痴をばらまいて信者が持ち上げてくれる快感から抜け出すことができないのだろう。
反対意見はブロックするか信者が勝手に攻撃してくれるので、より重鎮気分を味わうことができる。
ソーシャルネットワークのいいところは自分と同じ意見の誰かを簡単に探すことができる点だが、それがマイナスにも転じることがある。
意見の合う人とだけつるむことで、同じクラスタの中だけで自画自賛しあい、自分の価値観は絶対に正しいと信じ込んでしまう。
結果、価値観がアップデートされることはなく、タチの悪いモンスターが完成する。
相手のせいにして文句だけ言っていればいいわけだから、自分を顧みて悪いところを改善することもないだろうし、とてもお手軽で簡単に気持ちよくなれる。


男性の場合は性格がどうの非常識な振る舞いがどうのと、まあ文句も言いたくなるだろうなというような、共感できる内容もある。
ただ、女性は辛辣な意見が多く、顔が不細工とか、よくそんなこと言えるなと感じるようなことも平気で書き綴っている。
マッチングアプリやお見合いで変な異性とばかり縁があるとして、それは自分のレベルに合った人と出会っているだけで何もおかしなことはない。
それを理解できているのか分からないが、つらい現実を見るくらいなら、勘違いした幻想の中にいた方が幸せなのかもしれない。


性根が腐っているから結婚もできず、さらに相手への文句をまき散らし、どんどん腐敗臭がきつくなる。
結婚できないから腐っていくのか、腐っているから結婚できないのか。
お互いが自画自賛し合う、欺瞞だらけのタチの悪いクラスタに属していることも相まって、自分の醜さを直視することもなく死んでいく。
虫を密閉した容器に入れて共食いをさせ、生き残った虫を恨みのある相手を呪うために使う【蟲毒(こどく)】という儀式がある。
婚活相手の文句ばかり言っている人間を一堂に集めて最後の一人になるまで戦わせたら、どんなモンスターが誕生するのだろうか。


先日、【ドリアン・グレイの肖像】という本を読んだのだが、今まで読んでいないことを後悔するくらい面白かった。
内容についてはいつか触れるとして、こんなセリフがあった。

もしわたしたち女が男性の欠点を愛していなかったら、男性はみなどうなっていたでしょう?
一人も結婚していなかったに違いありません。
みなさんかわいそうな独身者の集まりになっていましたわ。

人間誰しも欠点はあるもので、夢中になった相手の悪いところは気にならないだけだ。
逆に、嫌いな相手の欠点はいくらでも挙げられる。
どんな欠点があっても、一緒にいたいと思える相手に出会いたいから婚活をしているわけなのに、欠点ばかり挙げる減点法をしていては埒が明かないと思う。
初対面の相手を加点法で採点するのも難しいかもしれないが、相手のいいところを見つけようと懸命な人は、例えばこんなコロナ禍のような非常時でも頼もしい。
もちろん自分も、できる限りの努力をして相手の望む姿に近づける必要はあるが。


ちなみに前述のセリフを受けて、登場人物のひとりであるヘンリー卿はこんなことを言っていた。

どんな女といても男は幸せになれる。その女を愛していない限り。